Diploma【学パロ元親】





先生主人公・生徒元親。




「大輔」


カラリと開く。
いつもならば、壊れるほどの勢いをつけて開けるくせにな。


『今日はまだいたのか』


「…別に、俺だって毎日さぼってるわけじゃねぇって」


どうだか。俺の授業が終わって、それでも学校に残った日の方が珍しい。

そのせいで俺にも愚痴が回ってくるから知っている。


「…笑うなよ」


『それで、どうしたんだ?』


こんな遅く残ってまで、何の用があるというのか。

まさか質問に来たとも思えないしな。


『取り巻きも置いてきたのか』


「…用がなきゃ、来ちゃいけねぇのかよ」


『いや…?いけなくはないが』


ただ珍しいと思っただけさ。

普段のように、ただ遊びに来た風にはとても見えない。

理由がないとは思えないね。


『とりあえず座ってな』


言い淀む元親はそのままに、それまでしていた作業を続ける。

とにかくこれが終わるまで、今日は帰るに帰れないのだ。


『ちょっとだけ待ってろよ』


「…おう」


コーヒーを渡してやってしばらく。
一向に元親は口を開かない。

言う気がないなら、少しくらいは待たせておいても良いだろう。
そう考えて元親に背を向け、仕事を進める間中、相手はずっと黙ったまま。



結局最後までそうして沈黙を守っていた。
既に日が暮れてかなり経つ。


今この場の空気が重いのは俺のせいか。


…本当は、元親がこの部屋に来た理由も知っている。

今日は俺の返事を聞きに来たんだろう。

元親の方から言い出せないのは、結果が怖いからなのか。

それとも空気が重いと思う俺の方が、言い出すのを躊躇っているのか。


『元親』


呼べば、一瞬だけたじろぐ。

しかしそれ以後は、まっすぐにこちらを見返してくるだけだ。

その強い目がやはり好ましい。

今日まで変わらず、自分を見てくれていた事が不思議なくらい良い相手だと思うとも。


『やるよ』


そう言って手渡した小さな紙袋。

不思議そうに見ている元親に、開けるように促して。


「…!、これ…」


驚く顔が予想通りで嬉しいね。


『道順は、その内教える』


渡したのは俺の家の鍵。

生徒だった今までは、曖昧にはぐらかして来たが。まあ、そうするしかなかったからな。

鍵は俺からの卒業祝いと思ってほしい。

即ち、これが答えになるだろう。


『卒業おめでとう元親』


…留年しないでくれて本当に助かったよ。

危うく俺は、教師としての道を踏み外すところだったからな。





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