聖杯戦争で夢主がクラスアサシンのBSR風魔さんを喚んだお話


「アサシンやめて!」
暗雲が月を隠す丑三つ時。少女の悲痛な叫びが、不気味なほど暗い森の中に響く。
あと一寸。少女の声がなければ、怪しい輝きを放つ苦無が少年の首を掻っ切っていただろう。あまりにも急なことで停止していた脳が、じわりじわりと今置かれている状況を把握していく。
ーーあの声がなければ、自分は知らない間に死んでいた。
認識した瞬間、少年の背筋に冷たいものが流れ、ガタガタと震える。苦無から視線を登らせていくと、行き着いた先は鉢金で顔を隠した、赤髪の男の顔。赤いペンイントが施されていて、その姿は多少目立つが、海外の映画でよく見る軍人のようだ。
しかし、持っているものや服装を見るに、軍人というより忍者と言った方が適切かもしれない。こんなにも冷静に判断できているのは、恐怖のあまり現実逃避していることのほうが大きかった。目の前の男は動かない。故に、少年も指一本動かせない。少しでも動けば、どうなるかわからないから。
「お願い。やめて、アサシン……」
足音とともに、懇願する声。男ーーアサシンと呼ばれた男は、少しの無駄な動きなく苦無をしまい、腕を組む。少年は少女の声に聞き覚えがあった。
「……お前」
少年が呼ぶと、少女は酷く困った顔をして俯く。少女は少年のクラスメイトであり、大切な友人だ。
「お前、これどういう……」
「……貴方も参加してたんだね」
なにを、なんて聞かなくてもすぐにわかった。
この戦いに、少年も参加しているからだ。
マスターの気配を全く感じさせなかったのに、まさか少女参加していたなんて、思いもよらなかった。
「どうして一人でいたの? こんな風に襲われるのに」
「それは……」
「−−今回は見逃してあげる。まるっきり丸腰の相手はしたくないから。だから、今日は真っ直ぐ帰って。他の人に襲われちゃうよ」
アサシン、行こう。と少年の返事も聞かず、アサシンと少女はまるで風のように消えた。その場に残された数枚の黒い羽を手に取り、少年は嘆息をつく。
「……アホかよ、アイツ」
サーヴァントも連れて歩かない馬鹿なマスターをみすみす逃すのなんて、少女くらいだろう。ましてや、あと一歩のところで殺せたのに、なぜ止めたのだろうか。その理由は、少年が分かりきっていた。
「戦いに向かなすぎ」
優しすぎる敵を思い、少年は頭を掻いた。

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テーマ「人外ファンタジー」
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