やっとの思いで保健室の前に辿り着いた真澄はホッとして急に力が抜けた。両膝がヒリヒリして真っ直ぐ伸ばせずにいたこともあって、ガクンと力の抜けた体はズルズルととその場にしゃがみ込んでしまう。

保健室の前までやってきていったい何をやっているんだと冷静になってきた頭が突っ込みをいれるのだが、いかんせん体は立ち上がりたくないと言うのだから仕方がない。痛いものは痛いのだ。

真澄は横着をしてしゃがみ込んだまま扉にゆっくりと手を伸ばす。しかし、スライドさせようとしたのだがたてつけが悪いのか扉は開いてくれない。ーーむ、扉まで俺に辛く当たるのか。思わず眉根をぎゅっと寄せて扉を睨みつけてしまう。当たり前だがそんなことをしていたって扉はピクリとも動かない。諦めてよっこいしょと立ち上がった真澄は扉に引っ掛けた指先にぐっと力を込めた。
するとどうだろう、思いの外簡単にスライドした扉は勢いよくズバンッと馬鹿でかい音を立てて授業中の静かな校内に響き渡った。

やばい。

あまりにも大きく響いた音に自分でしたことなのだが真澄は心底驚いていた。
取り敢えず保健師に謝らねばと慌てて保健室の中に視線を移す。

ーーそこで真澄はピシリと固まった。

どこを見渡しても保健師の姿は見当たらない。その代わりに、カーテンの裏に隠れているようで全く隠れきれていない人影が二つ。そのシルエットはどうみてもーー男同士のものだ。此方に背を向けている手前の人の顔はよく見えないが、奥の人に腰を抱かれて少し背を反らしているその後姿は身長も肩幅も(もちろん制服も)立派な男。

なんだこれ、なんだこれ。
ぐるぐるパニックを起こす脳内からはもう痛いという感情がすっとんでいる。
視界に映るのは普通に長身の二人の男。奥の人のなんか驚いた顔と、見開かれた大きな瞳。猫みたいなまーるいつり上がった目が此方を見てる。ーーえ、見てるっていうか。

目、合った!

理解した瞬間「失礼しました」と早口で呟いてバタンと扉を閉めていた。ココニイタライケナイ。そう頭が危険信号をピーピー鳴らしている。
早く立ち去らなきゃと踵を返し一歩前に足を踏み出した途端ジンジンと痛みが蘇ってくる。ウッと躊躇ったその瞬間、再び響くズバンッという音に肩が思い切り上下した。
チラリと振り向けば、そこにはさっきの猫目の人。



「あんたなにしてんの!」

「あ、え、すい」

「血だらけじゃないの!早く来なさいよ!」



へ?


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