「言っとくけど、お前が悪いんだからな」



そう言って見下ろしてくる風来に真澄はうんうんとうなづいてやりながら先を促す。風来は調子を取り戻してきたのか、どこか得意気な口調でドンドンと喋り出す。しかし、やれ"俺は心が広い"だの"いちを兄貴分だからな、まあ仕方なく"だのどうも的を射ない発言ばかりでちっともわけが分からない。流石の真澄も辛抱たまらず風来をじとっと睨みつける。



「……ふーくん」

「な、なんだよ」

「俺、結局ちっともわかんないんだけど」

「な、分かれよ!」

「これで分かったらその人は宇宙人だ」



相変わらずじとっと真澄に睨まれ続け、自分の言い方が悪いのだと分かっていつつそれを素直に認められない風来はカーッと顔が熱くなるのを止められない。バシンと真澄の頭を引っ叩くと「だってよおっ!」と声を荒げる。



「お前せっかくうちの学校入ったのに勝手に一人で登校すんのが悪ぃんだろーが!」



そう言ってもう一発ペシンと叩く。

一方、叩かれた真澄はたまったもんじゃない。これはもはやただの八つ当たりだ。取り敢えず言葉足らずの風来の言葉を真澄なりに解釈する。詰まるところ、風来は真澄と一緒に登校しようと思っていたのにそれが叶わなかったから腹を立てていたのだ。ーーなんて小さなことで。
真澄は思わずため息せずにいられなかった。



「だったらそう言っておいてくれれば良かったんじゃないの」

「当たり前にそうなるもんだと思ってたんだよ!」



それなのに昨日の朝迎えに行けばお前とっくに家出てるし、帰りも何時の間にか帰ってっから今日こそはって思って……と、昨日から溜め込んでいた文句を永遠にブツクサと言い続けている。なんて面倒な幼馴染だろうかと内心辟易した。見た目はこんなに厳つく粗暴そうなのに(実際荒っぽいのだが)言ってることとやっていることは小学生並だ。
ーーそうは言ってもね。
真澄は心の中で風来の不器用さに内心呆れつつもやはり仕方ないなあと思っていた。一人で勝手に落ち込み勝手に怒っていたとはいえ、その理由が自分と一緒に登下校がしたかっただなんて、言われた此方は悪い気はしない。むしろ、ちょっと可愛いとすら思う。不器用で素直じゃない彼はすぐ手が出るのが難点だが、それだって照れ屋な彼なりの感情表現なのだ。



「ふーくん」

「……」

「俺七時半に家出るから」

「……はえーよ」

「ふーくんみたいに俺は遅刻したりしないよ」

「喧嘩売ってんのか、ばか」

「というわけで迎えにきてね」

「……仕方ねぇな、そこまで言うんなら迎えに行ってやるよ」

「はいはい」



どこまでも上から目線だけれど、ーーやっぱりなんだか嬉しそうなんだよなあ。

真澄は仕方ないなと思いながらも、幼馴染のどこかほころんだ横顔にこちらもつられて笑みを浮かべるのだった。


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