ホームルームになっても真澄は冬川とずっと話し続けていた。
話によると冬川はバスケ部に所属しているらしい。小学生の時からずっとバスケ漬けだったようで、本人曰く食ってバスケして寝てを繰り返してきたとのことだ。ーー成る程なと真澄は冬川の身体を凝視しながらコクコクとうなづいた。冬川は身長が高くて身体つきががっしりとしていている。鍛えられたその身体はとても真澄と同じ高校一年生のものとは思えなかった。
また彼はとても聞き上手であった。普段同級生と喋り慣れていないはずの真澄が、冬川に相槌を打たれながらだと何時の間にか普通に話せるようにまでなっていた。

冬川は冬川で真澄を兎に角真面目でとっつきにくそうなヤツという印象から一変、眉や目元の感情表現が豊かな面白いヤツだと認識し始めていた。もともと身体が大きい事もあってか昔から小さい者やか弱い者に対する保護欲が人一倍ある方だった冬川は、話すようになったからには隣の席なのだしこれから山田の手助けをしてやらねばなとすら思い始めていた。




ーーそんな時だった。
ホームルームを終える号令がかかりみんなが席から立ち上がった途端、ガッターンッと大きな音を立てて廊下側から教室の扉が開け放たれた。
そのあまりにも突然でけたたましい騒音に、教室にいた者全てが驚きで硬直する。一気にシーンと張り詰めた静けさが教室中を満たした。

扉の外にいたのは苛立たしそうに眉間に鋭くシワを寄せた見るからに不良然とした男だった。金色の短い髪は重力に逆らってツンツンと立ち上がっており、まるでその者の気性を物語っているかのようだ。





「………大変だ」




隣からぼそりと聞こえた言葉を冬川は聞き逃さなかった。冬川はそっと左腕を真澄の右肩にのせポンポンと落ち着かせるようにたたく。大丈夫だからという気持ちを込めたのが伝わったのか、視線を合わせた山田は困ったように眉を下げた。



「俺、もう帰らなくちゃだ」

「え?」



いきなりせっせと机の中の物を大きなリュックに詰め込み始めた山田に冬川は首を捻る。山田はなんだか唐突なヤツだななどと考えていた所で「真澄!」と教室中に怒号が響いた。
慌ててその声の方を見やればカッと目を見開いた金髪の男が此方をーー正確には多分山田のことを睨みつけている。




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