「でもそんなに勉強してるんだったらここよりもっとレベルの高いとこ行けただろ?」



どうしてうちの高校を受験したんだと聞けば、その質問にまたしても少し眉を下げた山田はうーんとうなった後言葉を選ぶようにゆっくりと喋り出した。



「幼馴染が、来いって言ったから……かな?」

「は?」



予想外の返答に思わず間抜けな声が出る。




「ちょっと待て、てことはつまりお前は幼馴染に言われたからうちの高校を選んだってゆーのか?」




山田は眉を八の字にしながら数秒ためらったあと小さくこくんとうなづいた。




「いいのかよ、そんなんで高校決めちゃって」




俺は頭が悪かったから選択肢は広くなかったが、それでもバスケがしっかりとできるところを基準に高校を選んだ。うちの工業高校は学力面はレベルが低いがその分部活動に力を入れている。部活だけで学校を選んだ俺も偉そうなことは言えないが、今の山田の選択の仕方よりは真っ当なんじゃないかと思えた。
そんなことを会って間もないヤツに言えるはずもなく、頭良さそうなのにもったいねぇななんて言えば慌てたように首をぶんぶんと左右に振って否定される。




「頭良くないから勉強するんだよ、それに」




山田は、もう一度視線を宙に彷徨わせると今度は真っ直ぐと俺の目を見つめてハッキリとした口調でこう言った。




「ずっと一緒って幼馴染と約束してたんだ。確かに決め方はあんまり誉められたようなやり方じゃないけど、でも俺はどの学校に進学するかじゃなくて進学した後をどう過ごすかだと思ってる」




真っ直ぐと見つめられながら力強く言われた言葉は不思議と冬川の中にスっと入ってきた。
確かにその通りだと思う。俺はバスケを頑張りたくてこの高校に入ったけど、大事なのはこれからこの学校で三年間どうバスケに取り組んで行くかだ。少し考えれば普通に分かることだけれど、山田の言葉として伝わってきたこのことはただ自分で考えるよりもずっと深い意味合いを持たせてくれたように感じる。というかまず、自分一人じゃこんなことまず考えない。




「お前、すげぇな」




心からの言葉だったのだが、山田はどう捉えたのか焦ったように早口で言葉をまくし立ててくる。




「俺偉そうなこと言ったけど、本当は理由なんて後からとってつけたようなもんなんだ。ふーく…じゃなくて幼馴染には俺どうも頭が上がらないってゆーか逆らえないってゆーか」




あわあわと口をまごつかせる山田に思わず吹き出しそうになるのを懸命に堪える。なんだ山田、すげぇ小動物みてぇ。豆柴とか小猿とかそんな感じだ。

もう少しからかってみたいのと山田がこんなに言う幼馴染のことが気になってまたしても冬川は質問する。




「幼馴染ってどんなヤツ?」

「憎めない俺様」




またしても困ったように悩まれるかと思っていたというのに、山田は悩むどころか迷うことなくズバッと言い切った。




「え?悪りぃんだけどそれどうゆうこと?」

「一つ年上だからいつも上から目線なんだけど、少し抜けてて憎めないんだ」




ついついこの人だから仕方ないってなっちゃうんだよねと疲れた気に話す山田に今度は冬川が困ったように眉を下げる番だった。


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