帰り道。

途中までの同じ帰路をとぼとぼと帰るあたしと修兵。
別れ道に差し掛かると、少し立ち止まっておやすみを言うのがいつものこと。

しかし今日の別れ道、さっきのこともあって、あたしからはおやすみと言いたくなかった。これが最後の別れ道になってもなんら不思議ではないのだから。最後は修兵からおやすみを言って欲しくて、待っていたら沈黙だけが続いてしまった。

…あれ。

「…修兵さーん…」

呼んでも彼は下を俯くだけで、返事は無し。呑みすぎというほど呑んだわけでもないから、一体どうしたのだ。
こうなったら仕方ない、修兵から言って欲しかったけど観念して、おやすみを告げようとしたら修兵がいきなり顔をあげた。


「おい」

「え、なに」

「俺が好きなのは、お前だから」

おやすみ、
と一言。
そして駆け足で自分の帰り道へと向かっていってしまった。


突然の一言で、びっくりして何も言えなくて、ちょっと込み上がってきそうになる涙をどうしようかと考えた。


ああ、なんだ。
この宝物は、どうやらまだ手放さなくても良いようだ。
このまま絶対に手放すことのない宝物に変化していくことを祈った。

最後の宝物

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