真夜中午前2時。 神楽、定春が志村家に泊まっていて久しぶりに俺だけしかいない万事屋にはテレビ音が響いていた。 ただ、時間も時間であるからして。 明日に響くという真っ当な理由から、俺はテレビを消してから布団につき、夢と現実をさ迷っていた。 そんな午前2時過ぎ。 突然、ピンポンとインターホンが鳴るものだから一気に夢から現実に引き戻された。 何事かと、ぼうっとした頭て少し考えると、どんどん!と扉を叩く音が聞こえた。 …これはホラーデスカ? お化け?いや、何言ってんのお前、お化けとかさァ居るわけないじゃーん! 開けるべきなのか悩んでる(断じて怖いわけじゃないから!)間にも扉を叩く音は止まない。 俺はだんだんイライラしてきて、勢いよく玄関へ向かうと思わず悪霊退散!などと叫んで(怖いわけじゃないから!)扉を開けた。 そこに居たのは幽霊でも、強盗でもなく、ごんべえだった。 「…ちょ…」 「…ごめん、ね」 状況がすぐに把握出来ずに、暫く俺の動作が止まると同時に名前は俺の胸にしがみついてきた。 「…ごんべえ…?」 「……」 騙されない騙されない 俺は騙されないぞ! 俺は冷や汗を掻きながら心の中で呟いた。 昔からコイツはそうなんだ、銀さん、知ってる(昔っていってもここ数年の付き合いなんだが) いきなり暗い顔したりなんだするから、心配してみたら、いきなり馬鹿扱いしてくるようなそういうやつなんだ 「なんだ、何が目当てだごんべえチャン!アレか、プリンか!?」 「…」 え、 待って、イヤ待て待て待て 何、この感じ。 なんの返答も無いんだけど、この子。 返答の代わりに、ヤツは俺の甚平を強くぎゅうと握ってくる。まるで、置いてきぼりくらいかけた赤ん坊みてェと思った。 「……えーと…」 果たして、一体俺はどういう行動をとったら正解なのだろうということを眠気がふらつく頭で考えていた。 「…て」 それはまさしく蚊の鳴く声、というくらいの小さな声が耳をかすった。 え?と思いまた耳を傾けると力無い声で、このままでいて、と聞き取れた。 コイツにしてみたらあまりに珍しい言葉が発せられたので、俺は一瞬間どうしようかと困ったものの、甚平を掴む手の力が先ほどに増して強まったから背中を撫でてやることにした。 そんなこと言われたら動けるわけねェだろーに。 寝るのは明け方でも仕方ない、そう思えたのがどうしてかはまだわかりたくないと思った。 081209 |