「あっつい。退いて」 見上げる先には、晋ちゃんのいやらしい笑顔。 私があまりの暑さにだれて、畳の上で雑魚寝をしていたら覆いかぶさるように乗っかってきた。 お兄さん、胸板、見えてますよ。 開いた障子戸から入る風に吹かれて風鈴が涼しげに揺れて、ちりんと音を奏でる。 「暑いからなァ」 いやお兄さん。 暑いって、アンタ。じゅあさっさと退けばいい。なんてツッコミをしないあたり、私は面倒くさくなっているのだろう。 晋ちゃんは相変わらず笑ったままで、私の髪を撫でてくる。 「退いてって。テレビ見たい。」 すると、何も言わないで髪を撫でていた晋ちゃんの片手は私の首を掴んで、圧迫してくる。 「…くーるーしーいー…」 金玉蹴ってやって逃げるのは簡単なんだけど。 敢えて私はされるがままにしておく。それは私がSMプレイをしたいからとかそういう訳ではまったくなくて、 晋ちゃんが首を絞めるのは本気じゃないと思っているし、また晋ちゃんが本気でも晋ちゃんになら殺されてもいいと思っているからである。 だから私は晋ちゃんを止める事はない。まあ暑いのは勘弁してほしいところだが。 晋ちゃんは無表情になって少しもしないうちに、手は離れて呼吸がまともに出来る。 そのまま私の耳元に顔を埋めた。 いつもならこれで終わりなのに。 どうしたの、と私が口にする前に晋ちゃんが先に口を開いた。 「…息の根、止めちまいたいくらい愛してらァ」 私はその言葉を聞くと、なんだか口元が緩んでしまい、今度は私が晋ちゃんの髪を撫でた。 (不器用な貴方の愛がいとおしいの) 暑さの中の end 080730 100724 加筆・修正 |