「…んだよ、その顔は」

あたしのあつーい視線に気が付いたようで、修兵は走らせていたペンを嫌そうに止めて、溜め息混じりに横の机に座るあたしを見た。あ、すごい顔。眉を潜めてる。けど、修兵があたしを怒るわけにはいかないのを、あたしは知っているから、この心底不機嫌な仏頂面を崩さないまま修兵を見ている。

だって。不機嫌にもなりたくなるでしょうよ。月に1度あるかないかの二人での夕飯の約束。楽しみで楽しみで仕方なくて、仕事の邪魔にならないように定時になるのを待ってわざわざ隊舎に迎えにきたのに、締め切りが早まったから夕飯行けない、なんて。
もう、なんてこったい!よ!
外はもう真っ暗で、他の隊士さんは帰宅しているのに。


数時間前の楽しみな気持ちは何処へやら。あたしの気持ちは途方に暮れていた。


修兵のバーカバーカ、おたんこなす、短小野郎め!!!!


心の中で思う存分に罵ったところで、修兵の仕事が終わるわけでも、夕飯に行けるわけでもないのだ。あー。それでも、心の中には行く宛のないうやもやで酷く淀んだものが溢れかえっていて、気持ち悪くて仕方がない。飛んでってくんないかな。
行儀の悪いことは百も承知で、気持ちを抱え込むように、椅子の上で膝を抱え込んで時間が経つのだけを待った。


「今度はだんまりかよ……」
「…何を言えっていう」


修兵は申し訳無さげに頭を掻いて椅子から立ち上がった。あたしの近くに来るなり、こっち向いて、と言うものだから言われた通りに頭を上げたら修兵が近くなって、唇に暖かい感触が。

「今はこれで勘弁、な」


そう言って苦笑いをしてまた席に戻って仕事を始めた。あたしがキスに弱いことを知っているからタチが悪いよ、まったく。それでも唇に触れた感触が愛しくて、淀んでいた気持ちもすうっと居なくなった。

今は修兵に何を奢らせるかを考えながら、のんびりと待つことにしたのでした。


110411
人気急上昇中のBL小説
BL小説 BLove
- ナノ -