新年迎えましておめでとう、1月1日午前6日時半。
新年を自宅で迎えた私は、新年が来ると友達とあけおめメールや、電話などをして気が付いたら午前3時を迎えていた。元日は朝から家族とお節を食べることが当たり前になっていて、こんな時間に寝て起きられるかと不安になりつつ眠ったのが3時半のこと。

そして、今は午前6時半。私、3時間しか寝てないっつーの。あ、間違えた起きたのは6時だから2時間半だ。ああ、眠い!
私の神聖なる睡眠時間にメスを入れたのは阿散井からの着信だった。

寝ぼけた私の声に対して、元気はつらつな阿散井の声。
悪い、起こしたか?と言われたが悪いというか寝たい、本題は何んだと訊ねると初日の出を見ようとのことだった。

「やだよ眠い」

『心配すんな!今からバイク出すから、後30分したら着くから準備してろよ!』

何の心配だよ、と突っ込むつもりが言いたいだけ言われて電話が切れてしまった。なんだこの大迷惑なヤツ!!!

しかし、今から自宅に向かうと言われて、放置も出来ずにベッドから身を起こすとのそのそと着替えをはじめた。
なんて自分は律儀な人間なんだと思いながら、鏡と向かって化粧ポーチを開けた。初日の出だけならラインだけ引けばいいや。
時間は30分過ぎ。再び阿散井からの着信で、着いたから出てこいと言われた。はいはい、と電話を切ると物音を立てて家族を起こさないようにして家を出た。


「明けましておめでとうさん」

「…おめでとう…」

いつもは制服だから、私服の彼に少し違和感。阿散井の私服ってこんな感じなんだ。黒のネックウォーマーが赤髪と似合っていた。

「何突っ立ってンだよ、これ着けて後ろ乗れよ」

阿散井は予備のヘルメットを差し出してきた。しかし受け取ったは良いが、私バイクの後ろ乗ったことが無いことに気づいた。ヘルメットも調整が出来ずにいると、阿散井がったくとバイクから降りてきて、私の手からヘルメットを奪った。

「ヘルメットもまともに着けらんねーのかよ」


これでオッケー。頭をぽんと叩いて、またバイクにまたがった。

「ありがとう…」

なんか、阿散井の手が当たったところがくすぐったい感じがした。ヘルメット越しなのに。

またぼーっとしてた私に、早く後ろ乗れと声が掛かり、慌てて後ろにまたがった。


「ちゃんと掴まってろよ」


お、おう。
何処に掴まってろというのか。腰か?くすぐったそうだし、…なら肩か?自転車の後ろに乗ることを思い出して、阿散井の両肩に手を置いた。

私の手が両肩に置くのを確認すると、行くぞ、とアクセルを踏んだ。


何処に行くのだろう、
そもそも阿散井はここらの地理がわかるのだろうか。

辺りはまだ薄暗く、私のよく知る町並みから、どんどん知らない住宅街へ。
暫くバイクを走らせると、住宅街越しに東の空が仄かに明るくなっていた。早いな、もう朝なんだ。


「もうすぐで止まるぞ」
「え、うん」


言って暫くすると、石段の前でバイクは止まった。
私が降りると、阿散井も降りてバイクにキーを掛けた。

「ここ?」

「ちょっと階段登るから、気をつけろよ」


ヘルメットを外しながら、階段を登る阿散井の後ろを着いていった。
長い階段を登ると、そこは神社だった。

鳥居を潜ると、阿散井は正面の拝殿の近くまで進み、後ろ、と私の方を見た。


「…わぁ…!」

振り返るとそこには、さっきの明るくなっていた空と、先ほどまで空を邪魔していた住宅街が小さく見えた。すごい、と言っていると、オレンジの明かりが上へと昇ってきたのがわかった。

あ、これが、
「初日の出…」

「おう、キレイなもんだな」


初日の出を今までにも何度か拝んだことはあったが、いつも低い位置からだったので建物に邪魔されることが多かった。今回のように何に邪魔されるわけもなく、昇ってくる太陽を素直に拝めるのは初めてだ。


見惚れていると太陽はどんどん顔を出して、阿散井も私の隣に立った。




「……。すごいね…」

「だろ?…もう昇りきるな」


気が付けば太陽はほとんど昇りきっていた。あっという間の出来事で、圧巻されてしまった。

昇りきると阿散井は、お詣りして帰るかと言って、拝殿に向かった。私も輝く太陽を目に焼き付けると阿散井の後を追い、拝殿に手を合わせた。

ああ、なんだか不思議な元旦だった。
でも、悪くないな、と心の中で笑顔が溢れた。



「…また来年も来れたらいいな」

するとこっちを向いて歯を合わせて笑う阿散井。
不意にどき、としてしまい、新学期は阿散井を意識せずには居られないな、と熱くなる頬を押さえながらそう感じた。


「…楽しみにしてる」


その後ひいた恋みくじは大吉。
期待してもいいのだろうか、わからないけど、とりあえず。

今年はよろしくね、阿散井!



Happy new year!


110105
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