『どうした?』 その一言は、あたしが少しでも悩み、立ち止まると、それに直ぐに気付く度に修兵がくれる言葉だった。 修兵は何時だって、あたしを見守っていてくれて、躓けば直ぐに手を差し伸べてくれて、優しい笑顔であたしを引っ張っていてくれた。 修兵は、あたしにとってかけがえのない大切な人。 その修兵が、現世から帰ってきた。藍染隊長たちと、…東仙隊長と戦って。 あたしは修兵に早く会いたくて、この目で無事を確かめたくて。七番隊のあたしは駒村隊長から修兵が四番隊の医務室で暫くは休むと聞いた。業務が終わると急いで四番隊へ向かい修兵の居る部屋へと急いだ。 修兵の居る部屋は個室で、軽くノックをした。しかし返答は一切無い。寝ちゃっているのだろうか。悪いとは思いつつ扉をそっと開けた。 「…修兵…?」 部屋は真っ暗だった。真っ暗の部屋の中で、修兵はベッドの上で上半身を起こしていた。 そしてゆっくりと、顔をあたしに向けて、ごんべえ…と小さく呟いた。 久しぶりに見た修兵の顔は、やつれていて、彼は笑顔を作ったのだろうが、苦笑いに思えた。 後ろ手でドアを閉めて、ベッドに歩み寄る。ああ、修兵だ。良かった、生きてるんだ。 「勝手に、入っちゃってごめんね」 「いや悪ぃな、ぼーっとしてて」 座れよ、とベッドの横の椅子をすすめてくれた。 あたしはそれに腰掛けると暗いままの部屋で修兵と久しぶりに向き合った。 「…どうした?」 修兵が目の前に、生きている。その事実に何も出来ないでいると、修兵はいつものように優しい声をあたしに向けてくれた。 でも、今はあたしなんかより自分の心配をしてほしいよ。優しい声でも、元気の無さそうな表情。 あたしだって、何も知らないで此処へ来た訳じゃない。あっちで何があったのか、駒村隊長が少し教えてくれていた。 「それは、こっちのセリフだよ」 いつも修兵はあたしを支えてくれたから、修兵が辛いなら今度はあたしが、修兵を支えたい。 修兵がくれた安心を、少しでもあたしが修兵に分けられたらって思う。 「…」 「あたし、ちゃんと側に居るから」 無理して笑わないでほしい。 そう告げた。修兵みたいに優しい笑顔が出来てるかはわからなかったし、声は震えてしまった、けど。 修兵はベッドから身を乗り出して、伸びた腕はあたしを包み込む。あたしも椅子から体を浮かせて修兵へと身を預けた。 修兵の顔はあたしの肩に埋まって、あたしを抱き締める力は一層強まった。 久しぶりに触れ合う修兵の体は暖かくて、涙が出そうになった。 「…。このままで、居てくれっか」 うん、とあたしが頷いて暫くすると、修兵の背中は震えていた。 あたしにはその背中に手を回すことしか出来ないから、せめて修兵の辛いことが全部あたしに流れ込めばいいのに、と思った。 end 101230 |