まだ外は明るくならない頃、不意に目が覚めてしまった。喉が渇いた。冷蔵庫へ向かおうとベットから上半身を起こすと、右手の小指を弱々しく掴まれた。


「…どこ、行くの…?」


隣で眠っていたはずの彼女は眠たそうな目を不安げに俺へと向けた。

その目は、ずるい。
乾いてた喉なんかどうでもよくて、こいつの隣から離れたら駄目だって気にさせられる。

「悪い、起こしたか?」
「…ううん、へーき…」

首を横に小さく振るとごんべえが俺の小指を握った手を胸元に引き寄せて腕ごと抱え込むから、俺はバランスを崩して布団に倒れ込んだ。

「いっ…」
「修兵…よかった、」
「え?」

俺の腕を抱え込む力が少し強まった。なんだ、寝惚けているのか。


「修兵がね、居なくなる夢みちゃって…びっくりしたの」

隣に居てよかった。
そう言ったごんべえの顔は子供みたいで、左腕をごんべえの背中に回し頭を撫でた。

「安心しろよ、誰もお前に黙って居なくなんねーから」
「…うんっ」

嬉しそうに頷く。暫くすると寝息が聞こえてきた。しかしどうやら腕は離してくれそうになく、思わず苦笑い。
それでも、こんな時間があるのは幸せだと思うので俺も瞼を閉じるのだった。


end.
101104
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