鉢雷? 2011/11/09 23:18
私は君が言った言葉を信じているよ、疑ってるわけかではないんだ。でもね、雷蔵。君は自分を見ていなさすぎてる。君に一番近い私はそう思うんだ。雷蔵、胸に手を当ててそのままじっくり考えてごらん
「え、いや、ごらん、と言われても」
眉をひそめて、雷蔵お決まりの困った顔。胸に手を当てないものの、私の言ったことに対して頭を悩ませているようだ。
「…ぼく、なんかしたっけ?」
困った顔のまま、救いを求めるように私に首を傾げてくる。寝る準備だけは整った蝋燭の灯りだけを頼りにした薄暗い部屋の中央で、向かい合って正座をする雷蔵と私。一人分くらいあった距離を雷蔵の目を見つめたままじりじりと縮める。 「雷蔵、最近だ。最近、くの一の娘とよく関わることが多くなったろう」
「うん」
「雷蔵、きみはその娘が好きだ」
「えっ」
そうなの、と驚いた声をあげて丸い目をぱちくりとさせた。私と彼の距離は約半人分以下。
「どうしてきみは気付かない」
「だって、ぼくは三郎が好きだと思っていたから」
「そう、彼女と話している時のきみは、私と話す時と同じような顔をしているんだ」
「そうか、ぼくはおまえと同じくらい彼女が好きなのか」
感心しながら、自分に言い聞かすように呟いた。 ようやく気づいたか、私の好きな不破雷蔵。
「じゃあ、ぼくはどうしようかねぇ」
おまえも、彼女も同じくらい好きなら選べないよ。 また頭を悩ますことになるも、その口は笑みを浮かべていて、それをみたわたしの心はぞくりと震えた。
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