L
※ネタバレ注意
彼らが小さな身体で守った広いこの世界で、俺は生きている。
呼吸を止めてしまった彼らの代わりに、なんて烏滸がましいけれど。
彼らが守ったこの世界には、彼らが人一倍願っていた平和がやって来た。
国の違いなんて感じさせない。
肌の色も、体の大きさも、能力も、各々の誇るべき特徴であるとお互いが認めあう。
過去に争いあった人々も、彼らが命を賭けたあの運命の時を、お互い身を寄せ合ってただ1つの平穏の種を望んだ。
それが今、和平を持って、お互いがお互いを尊重して生きている。
でも、人々は…この平和を守った彼らを知らない。
魔神だ、魔女の子だ、と疎まれ蔑まれても、支え合って憮然とした態度で戦場に立っていた彼らを。
あまりにも理不尽で残酷な神を、産み落とされた人の子達が抗って翼をもいで地に落とした。
たしかに、世界には平和が訪れた。
だが、その代償が彼らの命だったなんて。
世界には本当の神なんて存在しない。
存在するのならば、世界のために命を賭けてきた彼らに何の罪があって死という罰を下したのかを訊いてみたいものだ。
平和を望んでいた彼らが、平和になったこの世界で生きることの出来なかった無慈悲さを呪いたい。
…でも、きっと彼らは、これを望まない。
裁きを下す神殿に向かっていった彼らは、自らの未来が見えていたに違いないからだ。
俺は泣きたくなった。
一緒に闘ってやれなかったこと、送り出すことしか出来なかったこと。
やれることはまだあったんじゃないか、と攻め足りない。
だからこそ、贖罪のつもりなのかも分からぬまま、度々彼らの墓標の前に跪いているのかもしれない。
1人1輪の花を土産に。
Last requiem
13/03/30
[栞]