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「あ…」
まただ、と言葉にならない声が漏れた。
たまに、物凄い孤独感を感じることがある。
なんだか寂しい、寒い、心細い。
特に、そんな体験をした訳じゃないのに…。
…なのにどうしようもなく人肌が恋しくなってしまって、一人じゃいられなくなる。
そんな時はいつだって誰かの傍にいた。
少しでも誰かと時間を共有して、一人の時間を作らないようにした。
でも、今日は酷く感じる。
寂しい、苦しい、怖い。
どうして怖い?
分からない、分からないよ…。
「…シンク?」
「っ、せ、ぶんっ…」
「ど、どうしたんだ?」
両手を広げて、受け入れてくれるセブンに遠慮なく抱きついた。
暖かい、人の温もりがじんわりと制服越しに伝わってきて、わたしの身体を包む。
だけど、不安がきえない。
怖いよ、一人なのは嫌だ。
セブンの手が、優しく頭を撫でてくれる。
するりと後頭部に回って、髪を撫でて、背中へ落とされるとポンポンと宥める。
「どうした?シンク。何があったのかは言ってくれないと分からないぞ?」
「ぅぅ…」
言ってくれないと分からない、と促すくせに、無理強いをしないセブンが好き。
好きなタイミングで言えば良い、言いたくなければ言わなくていいと甘やかされているようで。
でも、わたしは聞いてほしい。
不安なことは聞いて、砕く方法を教えてほしい。
だから、こうやって甘えては打破するための鍵を探す。
わたしにはみんながいる。
だけど、そんな中でも例外なしに孤独感はやってくる。
じわじわと何かを削り取られるようで、何かが擦れてなくなってしまいそうで。
言葉では表しきれない不安でごちゃごちゃして、どれを拾い上げればいいのかが分からない。
どの鍵が解放されて外へ出るための扉と番になるのか。
鍵が見つからなければ、わたしは一生このままで、一人ぼっちだ。
「…こ、わいよ、セブン」
助けて。
わたし、一人になりたくない。
ずっとこのまま、傍にいたい。
「シンク、大丈夫」
怖がらないで大丈夫だ、とセブンは笑う。
セブンの笑顔は不思議だ。
何でも包み込んでくれそうな優しさがあるのに、強くて格好いい。
「私達がいる。シンクと一緒だ。」
「う、ん…」
ポロポロ。
小さなビーズみたいな涙が落ちて、瞬間煌めいて、弾ける。
促されるように顔をあげて、セブンの綺麗な目を眺めた。
途端に視界がじわじわと潤んで、セブンが歪む。
見えなくなっちゃう。
イヤだ、セブンがいなくなっちゃう、皆が、消えちゃう。
わたし、ひとりぼっちになっちゃうよ。
何がなんだか分からなくなって、よく分からないことを叫んだ。
叫んで、さらに視界は歪んで変な世界になった。
まるで、別の世界みたい、わたしの世界じゃないみたい。
不安になる。
怖くなる。
ねぇ、セブン、どこにいるの。
尋ねたら、ここだよ、と返ってきて、瞼に温かいものが触れた。
瞬きをしてもう一度世界を見たときにはセブンがいて、綺麗な笑顔で笑う。
「シンク、笑おう。」
そうしたら、涙に皆が消されることはないんだよ、とセブンは呟いて、ぎゅっと抱き締められた。
世界がある。
わたし、セブンと一緒にいる。
皆がいる、同じ世界の中に。
それがわかって、漸く鍵を見つけた。
…あ、こんなところにあったんだ。
涙で見えなかったみたいだよ。
目の前にあったのにね。
「そだね、笑うよ、わたしも」
セブンと、皆と笑おう。
ずっと一緒に楽しくなろう。
そうしたら、わたし、怖いのも怖くなくなる気がするよ。
joyful manana
end
2012/04/29
[栞]