Jしかでてない、会話文皆無、シリアス、暗い、死ネタ(8がいないの前提)













僕が今までついた嘘と本当はどれ程人を泣かせただろうか。
全て愛ゆえにだったんだ。
そう一言で済むのなら、許されて楽になれるのならとっくにそうしてる。
どうせ、いつかは飽きられて、棄てられる、そう疑うだけの汚い心が塒を巻いた。
本当は好きだった、だけど僕はわざと嫌いな不利をして見せた。
愛して欲しかったから、わざとらしく距離を置いてた。

そうする度にキミはふと涙を浮かべて、悲しそうに眉尻を下げて見せた。
それは僕の今までの行いが禍したせいなのだと思うと、歪みきった思考が笑みを作り出した。
全て無意識のことだったのに。
その作られた笑顔を見たキミは、違う、とでも言うように笑った。僕はすべての毒気を抜かれたように、ワッと泣き出した。
止まらなかった。
壊れた蛇口のように涙腺は崩壊したまま涙はポロポロと流れて。

それで、もう一度愛してみようと思った。
歪んだ考えなんかじゃない。
純粋に、愛してる、って伝えようって誓った。

キミは僕を変えた。
本当は誰でも良かったんだ。
僕を愛してくれるなら、愛せるなら、それだけの平等なものを手に入れられるなら。
だってキミは僕に本当の心を教えてくれたから。
暗礁に乗り上げたままだった塊が押しどかされたかのようにスッキリとしたものだった。

でも、キミはいつの間にかいなくなっていた。
いつもいたんだ、僕のそばに。
隣にはぽっかりと穴が開いていて、もとからそこが空洞だったのだとでも言うように空気だけがあって。
腕を伸ばしても空を切るだけで、余計な喪失感だけが僕を埋めて。
隠してたはずの闇がまた。
靄のように広がっていっては、消えてしまった詰め物を引き剥がすかのように霧散させて、黒々とした悶々としたものに変えてしまった。

キミがいない。
どこにいったの。
僕に飽きたの?
棄てたの?
僕にはキミが必要なのに。
生きて行けないのに。
どうすればいいのか、わからなくなって、葛藤していたものもかち割られて、一気に雪崩れ込んできたのは闇だった。

ああ、そうだ
僕ははじめから独りだったじゃないか。
でもキミがいた世界を知ってしまったから。
僕はもう生きてはいけないよ。


「キミが居ないなら」

「僕は息を止めるよ」


長い月日を共に過ごしてきた刀を、掌が真っ白になるほど握りしめる。
震えるよ。
何で涙が止まらないんだろう
お願い
お願いだよ、涙を止めて
溺れてしまいそうだよ

もういないんだ
だって記憶の中にもキミを見つけられないんだ


「―――!」


名前も、顔も思い出せないんだ。
そばにあったはずの温もりも、見いだせない。
そこには闇しかなくて、わずかな光もなくて、前もうしろもわからなくて、ああ、もう。

そうだ、さよならしよう

ずぐ、と僕に突き刺さった刀、刺さったところから懐かしい綺麗な赤が吹き出して見えた気がした。
心が熱くて堪らない
まるで、あの頃みたいだと思った。

もうキミがいないから
こんな世界、いらないから
そう思って棄てた

穿った心の臓は確かに脈を打っていて、いきろ、いきろって叫んでる
だけど分かってる
何もかもが終わるんだって

でもね、懐かしいんだ。
走馬灯のように、キミの笑顔や仕草一つ一つが戻ってくる。
交わした言葉も、触れた温もりも、全て。
失ったものが戻ってきたんだよ、暖かくて、また涙が出た。

ああ、キミはここにいたんだね?
僕の中に、ずっといたんだ。
あはは…道理で見つからないわけだよ。

でも、やっと会えた。

カシャン、と遠くでなにかが落ちる音と、消える音を聞いた気がした。





   Ropedancing




end.
12'03'09



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