氷室辰也は穏やかでいて、それでいて熱い男だ。

男らしくも荒々しさのない優しい色男と思われがちだが、帰国子女で様々な経験をしてきた彼は、その身にかなりの情熱を秘めているのである。

普段のイメージをガラリと変えてしまうような本当の彼を見ることが出来るのは、打ち込んでいるバスケで深く彼に関わった者か、恋人という特別枠の者───名前ぐらいだろう。


「待って、辰也…」

「待てない。分かってるだろ?」

「分かってる、けど…」


冷たいシーツに沈んだ体はもうとっくに熱を帯びていたし、自分に覆い被さる彼も熱を高めていると分かってはいたものの、生理的な涙で瞳を濡らした名前は息も絶え絶え懇願した。

カーテンの隙間から差し込む明るい日差しが、頭上で何食わぬ顔で室内を照らし続ける電灯が、氷室の端正な顔立ちをまざまざと見せつけているからである。

いや、端正な顔立ちだけでなく、はだけたシャツから覗く首筋や胸板、筋肉が綺麗に張った腹までしっかりと名前の瞳は捉えてしまっていた。

それはつまり、名前に覆い被さる彼にも、乱されて泣き出しそうな表情や、愛らしい下着、白い肌に散った薄い痕が見えているということである。

まだ太陽の高い真っ昼間、選りに選っていつ誰が来るか分からない保健室でこのまま───なんて、名前からすれば有り得ない選択肢だ。

が、対する氷室はそうでもないらしい。

柔らかく蕩けだした肌を指で、舌で愛でながら、色気を存分に含んだ瞳で名前に語りかけている。


「やっぱり、今此処ではヤダ───」

「いくら名前の頼みでも、それは聞けないな」

「ん…っ!」


普段はボールを扱う大きな掌が、露わになった腹を滑り上がり、膨らみへと辿り着いた。

与えられるがままに受け入れる名前は弱々しく身を捩るが、彼の手が止まることはない。

下着も手早く取り去られ、そこに直に唇を落とされれば、甘くくぐもった声が小さく漏れる。

その触れ方は酷く優しいというのに、それらは確実に、そしてやや強引に名前から快感を引き出していた。


「あぁ…っ、ん、ん…」

「足りない?」


首を縦に振っても横に振っても答えは同じだ。

ぺろりと自身の唇を湿らせ、満足げに笑みを浮かべた氷室は、素直に熱い吐息をこぼし続ける愛らしい獲物に食らいついた。


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