(男バス主将と私の続き)


呼び出し食らったから数学研究室行ってくる。

そう言って別れた幼馴染みを迎えに教師のもとを訪ねれば、入れ違いだとあっさり追い返されてしまった。

オレとアイツの関係をまざまざと示されているようで気が滅入ったが、今吉を置いてきた図書室へ戻るともっと気が滅入ることとなった。


「あーもーホント胡散臭いけど今吉クン大好きだわ」

「そらどーも。ワシもなんやかんやで可愛い名字サン大好きやで」


にっこり、という音がしそうな程にあからさまに笑ってみせる今吉の斜め向かいで、幼馴染みの名前もこれ見よがしに笑っている。

一見すれば仲の良い恋人に見えるかもしれないが、この2人はそんな甘い関係ではない。


「ほな大学入学したら付き合おか」

「ぶっ!!?」


おい今吉、からかいすぎだ。


「名前?」

「おぉ諏佐やん。おかえり」


オレは平静を装って、荷物を置いたままだった今吉の向かいの席に腰を下ろす。

数学は出来たのかと隣の名前に訊ねると、何故か容赦なく腕を叩かれた。

結構痛い。

幼馴染みのカンとでも言えばいいのか───こういうときコイツは大体もやもやしてる。

今回は言わずもがな今吉のことで。

とりあえず惑わされるなの意を込めて頭を撫でておいたら、名前のきょとんとした間抜けな顔と今吉からの笑っていない笑顔が返ってきた。

…………マジかよ。


「遅かったけど、佳典何処行ってたの?」

「数学が出来ない何処かの誰かさんを迎えに行ってたんだよ」

「え、ごめん。私の数学イコール今吉だから!」


何のイコールだよと思うが、これが名前の普通なのである。

1年の頃にバスケ部かつPG同士、そして主将を期待される特出した技量───これらの共通点があった2人は何かとウマがあったらしく、親しくなるのに時間はかからなかった。

子離れ……いや、妹離れとでも言えばいいのか、そんな光景にオレは何処か物足りなさを感じていた。

数学面では今吉のカバーが必要なものの、そもそも頭の良い名前もバスケ以外では抜けているところもあって、幼い頃から面倒を見なければならない存在だと思い込んでいたからだ。

上手く言い表すことは出来ないが、ここ数日胸の引っ掛かりがどんどん大きくなっている。

受験を意識しだして勉強する機会が増える。

つまり名前と今吉がより会話するようになる。

今吉とつるむことも名前とつるむこともあるオレは、上手く間に立っているようでいつの間にか蚊帳の外。


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