頭が良くて運動も出来て、一見真面目そうな感じなのに、奥が見えない瞳と関西弁が胡散臭さを感じさせる奴。

こう説明すれば、私が誰のことを言っているのか皆すぐ分かってしまうぐらい、アイツは特徴的でちょっとした有名人だった。

こんな言い方してるけど、私は別にアイツが嫌いなわけじゃない。

むしろ同じバスケ部主将同士仲は良い方だし、共通の知り合いもいるぐらいだ。

そして何より今の時期、私にとってアイツは必要不可欠な友人なのである。


「あ、いた今吉!」

「名字やんか。どないしたん?」


受験を控え、放課後でも人気の多い3年教室を足早に駆け抜けた私が彼を見つけたのは、勉強熱心な生徒が通い詰める図書室だった。

長机の一角には数冊の赤本とノート。

彼の向かいに見覚えのあるペンケースが置いてあるし、どうやら私の幼馴染みと此処で自習していたらしい。


「いや、分からないところは今吉に訊いた方が早いから」

「ってことは数学か。そこ諏佐やし、まぁ座りーや」


やっぱりかと思いながら、私は今吉の斜め前の席に腰掛けると、いそいそとプリントを引っ張り出した。

先程まで担当教諭に散々説明してもらっていた課題だが、結局私の中には何も残らなかったのだ。

どうもこの教科と先生と相性が悪いみたいで、正直いつも赤点ギリギリなのである。


「せやけど自分、こないだのセンター過去問、むっちゃ成績良かったんやろ?」


今吉はシャーペンをくるくる回しながらプリントを覗き込んだ。


「選択問題なんて消去法だし、天から降ってきた数字選んだら大体当たる」

「つまりオール記述問題では点が取れん、と」

「その通り」

「直感型………いや、ある意味天才型やもんなぁ、名字」


褒められているのか貶されているのか、喋りながらも今吉は器用に逆さに公式を書き込んでくれる。

きっとこれを更に応用して展開するんだろうけど、生憎私の頭はこの辺りで考えるのを止めてしまうのだ。


「ここまで書いたら次どーなるか分かる?」

「これこっちに移動させてひたすら計算して、出た数字こっちに入れてまたひたすら計算する感じ?」

「分かっとるやん」

「分かってても出来ないものは出来ない」

「なんでやねん」


関西定番のツッコミいただきました。

こんなことを言いながらも、今吉はそれは丁寧に、かつそれは器用にプリントに続きの計算式を綴っていく。

分かり易く過程を分解してくれているそれは、理解力に乏しい私でもどうにかなりそうなものだ。


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