学校都合で体育館使用不可ということで、今日はバスケ部の息抜きデーとなった。

テスト前でもないので勉強をしなければならないというわけでなく、ストリートで自主練するか遊びに行くか、昼休みに急遽部活中止の連絡を受けた部員達はざわめきたったのだが、まるで姉妹のように仲が良い副主将とマネージャーは即座に後者を選択していた。


「おまたせ、遥。待たせちゃったわね」

「ううん、大丈夫」


放課後、帰り支度を済ませた実渕が正門に向かうと既に遥は到着しており、眺めていた携帯を鞄へ仕舞いながら笑みを向ける。

一見微笑ましいカップルの待ち合わせのように見えるが、この2人が同性の友人の如く仲が良いのは周知の事実のため、疑ってかかる生徒は誰もいない。


「あっ、レオ姉に遥じゃん!オレも混ぜて!」


その時、肩を寄せ合い何処から行こうかと楽しげに話す2人に飛びかかったのは、同じくバスケ部の葉山だ。

鬱陶しげに眉根を寄せる実渕に対し、抱きつかれても動じない遥は「コタくんだー」と呑気なものである。


「今から玲央とカフェ巡りするんだけど、コタくんも来る?」

「カフェ巡り〜?何かおっしゃれ〜!」

「ちょっと遥、余計なの誘わなくていいわよ」

「コタくんが混ぜてって言うから…」

「お前ら、さっきから目立ってんぞ」


続いて飛んできた声に振り返れば、気怠げに肩をバキバキ鳴らしている根武谷がいた。

いつの間にか彼が言う通り、正門前は遥達を避けるようにちょっとした人だかりになり始めている。

体格も良ければ強豪バスケ部の部員ということもあって、そもそもこのメンバーは学校内外問わず目立つ有名人なのだ。

しかし、そんな人だかりを更にざわつかせる人物が現れた。

バスケ部1年主将・赤司だ。


「あら、征ちゃんもお帰り?」

「ああ。今日は筋力トレーニングに切り替えるよ」


モーゼの如く自然と出来た道を颯爽と歩き、迎えの車に乗り込もうとした赤司だったが、その前でふと遥に視線を送る。


「玲央が一緒なら問題ないだろうが、早めに帰宅して下さい。最近不審者の目撃情報が出ていますから」

「うん、気を付けるね。ありがとう」


手を振る遥に、赤司はほんの僅かに左右異なる色彩の目を細めてみせた。

そうして去っていく黒塗りの高級車を眺めてから、大きな溜め息を吐き出したのは葉山だ。


「は〜〜〜〜〜、さすが赤司、先輩マネージャーの近辺は把握済みってか」

「七瀬のVIP待遇は今に始まったことじゃねーだろ。さて、オレも帰って筋トレしねーと」

「遥は私がしっかり家まで送って帰るから安心してちょーだい。で、小太郎はついて来るの?来ないわよね?」

「ちょ、レオ姉〜!」


そんな校門前での一騒ぎを、少し離れた空き教室で聞いていた学生がいた。

うんざりした様子で、目を通していた文庫本を栞も挟まず閉じ、未だきゃんきゃん楽しそうな後輩を冷えた目で見下ろす。


「全然内容入ってこねーよ…」


独り言ちた黛は、さっさと荷物を纏めると教室を後にした。




洛山高校の場合


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