「センパイ、起きて大丈夫ですか!?オレで出来ることならなんでもやるんで、言ってください!」

「ありがとう、降旗くん。その言葉だけで大丈夫だよ」

「…粥作ってくるっすけど、なんか嫌いなもんあるのかよ、ですか」

「ありがとう、火神くん。嫌いなものはないから」

「伊月先輩とカントクからノート預かってきました。ここに置いておけばいいですか?」

「ありがとう、テツヤ。そこにお願い」


畳み掛けるように飛んでくる後輩の言葉1つ1つに返事を返し、遥は小さく息を吐いた。

"至れり尽くせり"とは、このことを言うのではないだろうか。

短く了承を返し台所へ消えていく火神、傍らに控えそわそわと落ち着かない降旗、部屋の主の如く室内を把握している黒子。

遥にとって可愛い後輩であると同時に大事な仲間でもある彼らは、各々与えられたことをこなしていた。

上手い具合に分担されているし、このトリオには様々な意味で期待していいだろう。

暫し思いを馳せた後、そう言えば、と遥は傍らの後輩へ声をかける。


「今日練習どうだった?」

「……や、その………………ハイ」


遥からすれば特に深い意味もなく共通の話題を出したに過ぎなかったのだが、降旗はたっぷり口ごもった上に言葉を濁した。

この間の真意は彼にしか分からない。

が、昨日遥の友人でもある誠凛の女子高生カントクが、それはもう形容し難い笑顔で話していたメニューを実行していたのだとしたら───降旗の反応も納得のものである。

カントクの練習メニューは効果が期待出来るものであるが、その分半端なくキツいのだ。


「今日もキツかったけど…楽しかったです。遥先輩がいなかったのは少し残念でしたけど」


よくよく考えるとこっぱずかしいセリフを平然と言ってのけたのは、部屋の主の如く我が物顔で机上を片していた黒子だった。

信じられないといった様子で目を瞠る降旗と、照れくさそうに頬を綻ばせる遥。


「私がいてもいなくても、することは変わらないのに」

「「そんなことないです」」


後輩2人の声が見事に重なる。

ちょうどそのとき、火神が部屋に帰ってきた。

制服の上に持参したと思われるエプロンを着用しているが、その姿はなかなか様になっている。

そして、そんな彼の手には湯気を立てている1人用の土鍋。

見るからに熱そうなそれは薄味に調整してあるだろうがしかし、見た目や匂い、その全てにおいて遥の食欲を刺激する粥だった。


「熱いっすよ」

「大丈夫、いただきます」


その発言の1秒後、勿論注意深く息を吹きかけてから口に運んだのだが───お決まりの如く遥は熱さに悶え、降旗は慌てふためき、黒子は素早く飲み物を差し出し、火神は飲み物のおかわりを用意しに台所へ走ることとなるのである。




火神と黒子と降旗が看病

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