「あ、起きた〜?具合どう〜〜?」
ぱちくり、と双眸を瞬かせ遥は慌てて飛び起きた。
見慣れた天井から自室へと視線を動かすと、ユルい雰囲気を纏う彼がユルい口調で心配の声をかけてくる。
何故、彼が此処に───記憶を辿るも答えは見えない。
そもそも何故自分は自室のベッドで、しかも寝間着で寝ていたのか。
すっかり消えてしまっている記憶を呼び起こそうとするも、稲妻の如き鋭さで襲いかかる頭痛のせいで中断せざるを得なかった。
「…あの」
「ん〜?」
ユルく返事を返した彼の手には何やら分厚い冊子が。
見覚えのあるそれに遥は"あ"と面食らってしまう。
「春日さん、それ…」
「あ、置いてあったから勝手に見ちゃった。ゴメンね〜」
"帝光中学校卒業アルバム"───聞く人が聞けばそれはもうとんでもない興味の対象であろうそれを重たげに閉じると、春日は相変わらずのユルさで言った。
そのユルさのせいで分からなくなっているが、謝る気はあるようである。
「何かあった〜?」
「…え?」
ふと真剣な眼差しに射抜かれ、遥はびくりと体を震わせた。
そんな彼女を安心させるためか、春日はそれは柔らかく微笑んでみせる。
「泣きそうな顔してるけど。…って、風邪のせいか。熱高かったしね〜」
「…え?」
「…ん?」
先程とは異なるニュアンスの疑問符が、遥の頭上に浮かんだ。
その様子に、春日の中にも疑問が生じたらしい。
「もしかして覚えてない〜?今でこそマシだけど、顔真っ赤にしてぐったりだったんだよ、七瀬さん」
分厚い壁の先に追いやられていた記憶が途端に戻ってくる。
気晴らしに出掛けた帰り、体全体のダルさを感じながら自宅への道を歩いていると、休日にも関わらず制服に身を包んでいる春日に出くわしたのだ。
数言の他愛ない世間話の中で、彼が受験勉強のため図書館に行っていた帰りだと判明し───
「私、春日さんとお会いして…」
そこから記憶がないのは、体が限界にきたからなのだろう。
春日曰く、力無く高熱に魘されていた遥を家まで引き摺るように連れて帰り、母親にもてなされた結果が今らしい。
「ま、気にすることでもないし、おとなしく寝ときんしゃい」
優しく柔らかくかけられた言葉が、遥の中へと染み渡っていく。
けして無理を強いるような言い方ではないのだが、彼に言われると素直に従うという以外の選択肢が見えてこない。
「風邪はもらってあげられないけど、他はもらってあげられるかもよ〜」
嬉しげに笑みを漏らした遥だったが、胸に支える何かが消え去った瞬間襲ってきた微睡みに、すぐさま意識を手放した。
春日が看病
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