「…あの、私までお邪魔しちゃってすみません。具合どうですか?」
「謝んな。…もう治りかけだし」
そう答えながら、ベッドの上で半身を起こしている宮地は頭を抱えていた。
眉を八の字にして申し訳なさげにしている他校の後輩の後ろでは、己の後輩たち───それも少々生意気な───が何やら騒いでいる。
せっかく治りかけた風邪が振り返しそうだと、宮地は片頬を引き攣らせながらお決まりのセリフを吐き出した。
「緑間、高尾、うっせーよさっきから。刺すぞ」
だが、その物騒な発言も、体調不良のせいかいつもより覇気がないようである。
そんな先輩からのお叱りを軽く躱すと、後輩の1人・高尾はそそくさと用意をしながら遥の方を見た。
「すんません遥サン、宮地サンのことお願いします。ほら行こーぜ真ちゃん!」
「そもそも何でオレまで…」
「あー、ハイハイ、それは行きながらってことで。じゃ、おつかい行ってきまーす」
「押すな!」
「いってらっしゃーい」
不満そうな緑間の背を押し、高尾は宮地の部屋を出て行く。
片手を小さく振りながらその姿を見送ると、遥は部屋の主へと向き直った。
傍らに腰を下ろして穏やかに微笑んでみせた遥に対し、宮地は全く正反対の様子で大きな溜め息を吐く。
彼は今流行りの風邪にかかり体調を崩した結果、学校と部活を休んでいた。
そうしたら、共にバスケに励む後輩2人と、何故か他校の後輩の計3人が見舞いにきたのである。
主将・大坪から2人の来訪は知らされていたとは言え、擽ったさと情けなさ故の苛立ち、その他諸々の疑問のせいで、頭を抱えることとなったのだ。
「……七瀬」
「はい」
「風邪移っても責任とれないからな」
「移らないように頑張ります。あ、でも移した方が早く治るって言いますよね?」
「オマエに移ったら、他の奴らがうるせーだろ」
人間誰しも体調を崩すときはあるものだが、バスケに全てを捧げている身としては、やはり体調を崩さないに越したことはないという点は、宮地も遥も重々承知していることである。
「移ったら轢くぞ。木村ん家の軽トラで」
「……轢かれないように頑張ります」
頑張るも何も帰るっつー選択肢はないのか───と思いはしたものの、宮地はそれを口に出すことはしなかった。
遥の答えは分かりきっているからである。
「寝る。アイツら帰ってきたら起こして」
「あ、はい」
ベッドに横になると、宮地は遥に背を向ける形で布団を被った。
少々長めの明るい色の髪がさらりと流れる。
「…七瀬」
「はい」
「あ……………………やっぱいいわ」
「?」
宮地を看病
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