どうしてこうなったのか。
愛用のマグカップに並々注がれた熱々のホットミルクに口をつけながら、遥は自室のローテーブルを共に囲んでいる意外な人物たちのやり取りを傍観していた。
「いやー、ほんままさかこんなとこで会う思てなかったわ」
中学時代から顔見知りである頭脳派PGが2人、どういうわけか遥の部屋で寛いでいるのである。
一見朗らかな先輩後輩の会話が繰り広げられているのだが、どちらも頭が切れると知っているためか、見ている側は変に緊張してしまっていた。
「そう言えば、七瀬さん風邪大丈夫なん?」
「あ、はい、ありがとうございます。もう大丈夫です」
不意に声をかけられ、びくりと大きく肩を跳ねさせてから遥は頷いてみせる。
「せやったらええけど、コイツおったら治るモンも治らんやろ。無理したあかんで」
心配の声と共に、筋肉のついた逞しい腕が遥の額へと伸びてきた。
「もう熱はなさそうやな」
そう言った今吉曰く、花宮はつい先程、それはもう爽やかな笑顔を貼り付けて、買い物へ出掛けるという遥の母親を家の外まで見送っていたらしい。
礼儀正しい優等生の皮を被った彼に気を許し娘との留守番を頼んだのだろうが、その光景をたまたま目撃していたのが今吉だったというわけだ。
花宮と今吉は、言わずもがな元チームメイト。
そんなこんなで今吉が此処にいるのかと納得した遥は、両手で包み込んだマグカップへ視線を落とした。
真っ白なホットミルクは大分飲みやすい温度になっていたが、その色のせいなのか何なのか、不思議とこの場には不釣り合いなものに見えて仕方ない。
賢さ故花宮が何を考えているのか悟るのは困難だが、眼鏡の先の瞳の奥が全く見えない今吉の考えを悟るのもかなりの難題なのである。
そんな今吉の背後で、花宮は溜め息と共に本音を零したのだが、
「……アンタには言われたくないね」
「あ、スマン。今何て?聞いてなかったわ」
本音なのかどうなのか、今吉は人当たりの良さそうな調子でさらりと躱してみせた。
底が見えない今吉と花宮を交互に見やる遥は、少々挙動不審気味である。
「あぁ、ご家族さん帰ってきたら帰るから安心してえーよ」
言わば番犬やねんからそない警戒せんと、と付け足した今吉は口元に弧を描く。
「取って食うわけやないんやし。なぁ、花宮」
「…………」
買い物に出掛けたという母親が帰ってくるまで、後数十分。
病み上がりである遥は、また違う意味で体調が悪化しそうだった。
花宮と今吉が看病
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