「うわぁあぁあああ!!」

「誠凛が!?勝ったぁああ!!!」


誠凛対海常、100対98でタイムアップ。

その意外すぎる結果に、体育館全体が揺れていた。


「うおっ…しゃあぁあ───!!」


ブザービーターで勝利をもぎ取った火神も、喜びの声を上げる。


「勝っちゃった…」


遥はそんな火神を視界に入れたまま、妙な脱力感に襲われていた。

柄にもない程熱くなり、自然と強張っていた体が少し遅れて弛緩し始めたらしい。

誠凛は勝った。

海常は負けた。

火神と黒子が勝った。

黄瀬が負けた。

つい先程明確となった結果が、脳内で円を描いている。

しかしもうそれすらも、白く覆い尽くされそうだった。


「黄瀬泣いてねぇ?」

「いや、悔しいのは分かっけど…練習試合だろたかが…」


観衆から聞こえた声に、遥は弾かれたように黄瀬を捜す。

コート上で立ち尽くしている彼は、俯き加減でしきりに顔に手をやっていた。

彼と共に泣く資格のない遥は、その姿をただ見守ることしか出来ない。


「っのボケ、メソメソしてんじゃねーよ!!つーか今まで負けたことねーって方がナメてんだよ!!シバくぞ!!」


海常主将の見事な蹴りが、黄瀬へお見舞いされた。


「そのスッカスカの辞書に、ちゃんと『リベンジ』って単語追加しとけ!」


笠松の叱咤激励を聞いて、遥は密かに胸を撫で下ろす。

黄瀬は確かに遥の後輩だが、その後輩の意味は昔と今とではけして同じではない。

つい居たたまれなくなってしまっていたが、彼女はもうそんなことが出来る立場ではないのだ。


「整列!!100対98で誠凛高校の勝ち!!」

「「ありがとうございました!!!」」


遥は漸く、勝利を噛み締めて綻んだ。










帰り支度を済ませた誠凛のカントクと、体育館外まで見送りに出てきた海常の監督は甚だしく対照的だった。

苦虫を噛み潰したような武内に対し、光り輝く瑞々しい笑顔が眩しいリコ。

正直、様を見ろと思っていた遥も、思わず苦笑いする程の差だ。

自身の部員たちより一歩前へ歩み出た両主将が、握手を交わす。


「地区違うから次やるとしたら…I・H本番スね」

「絶対行きます。全裸で告るのやだし」

「?」


事情を知らない笠松は疑問符を浮かべているようだが、日向からすれば切実な問題だろう。


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