「火神でも歯がたたない黄瀬の弱点が、パス回し以外コート上で最弱の…黒子…!?」


敵味方問わず、遥以外の面々は息を飲んだ。

黄瀬涼太は強敵である。

わざとではないとは言え、挨拶がてらゴールを壊すようなパワーを持つ誠凛10番・火神でも押され気味なのは、試合を見ていれば誰にでも分かる事実。

そんな黄瀬の弱点があの黒子だと、誰が気付けただろうか。


「で?」


弱点を答えられ暫し面食らっていた黄瀬だが、すぐさま挑戦的な笑みへと戻る。


「確かに黒子っちのプレイだけは見てもムリっス。けどそれで何が変わるってゆーんスか?」

「第1Q終了ー!休憩2分です!」


ちょうどいいタイミングで、第1Q終了の合図。


「変わるさ!次の第2Qでホエヅラかかせてやる!」


巻き返し宣言を済ませた火神を含む部員たちを迎えるため、遥は立ち上がりマネージャー業務を開始した。

相手チームのエースの弱点も明確になったところで、ベンチに戻ってきたメンバーとカントクは素早く攻略法を話し合う。


「…なるほど。……うん、いけるかもソレ」


現在のスコアは27対35。

誠凛劣勢の8点差だが、点差などあってないようなものだ。

黄瀬が模倣出来ない黒子をどう使うかによって、十分逆転は可能である。


「火神君もやっと頭冷えたみたいね!」

「いや、オレは最初から…」

「「超ムキになってたよ!」」


黄瀬の見下した挑発もあったのだろうが、もう少し落ち着いてプレイしろと言うのが全員一致の意見だ。

代表してカントクと主将と司令塔にツッコまれた火神に、遥も思わず苦笑を漏らした。


「けど、黒子君と火神君、2人の連係が大事よこれ。出来る?」

「…う、なん…とか…」


リコの質問に歯切れの悪い答えを返す火神。

そんな彼の脇腹に、隣にいた黒子の手刀が食い込む。


「きょっ…」


奇声を上げた後、火神は痛みに震えながら黒子へ食ってかかった。


「テメ、何いきなり…」

「黄瀬君を倒すんでしょう?」


数秒黙り込んでから、火神も黒子の脇腹に手刀をお見舞いする。


「ったりめーだ!」


今度は黒子が痛みに震える番だった。


「痛そう…」


ルーキーたちのやり取りを間近で見ていた遥は呟くも、その表情はどこか楽しそうである。

彼らがこの連係をやり遂げれば、黄瀬に一泡吹かせることも夢ではない。


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