「「弱点…!?」」
キセキの世代の1人・黄瀬涼太に弱点があると言い放ったのは、元チームメイトの黒子テツヤ。
コート内で黄瀬のプレイを見てきた彼が言うのだから、その信憑性は高い。
「なんだよ、そんなのあんなら早く…」
日向が言う通り、弱点があるなら攻めていきたいところだ。
「いや…正直弱点と言えるほどじゃないんですけど…」
しかし黒子は、敵の弱点よりも先に攻略せねばならない問題に直面していた。
「それよりもすいません。もう1つ問題が…」
「え?」
仲間たちが疑問の表情を向ける。
「予想外のハイペースで、もう効力を失い始めてるんです」
「…!?」
その厄介な問題に、黒子は人知れず直面していたわけではない。
気付いている者が、敵と味方に1人ずつ。
遥は自身の後輩を一瞥すると、彼の肩に手を置いた。
「テツヤのミスディレクションは、フルに発動出来ないの」
黒子の事情を知る味方───帝光時代のマネージャーでもある遥が、苦笑気味に「ね」と同意を求めると、彼は小さく肯定の返事を返す。
「平たく言えば、他に気を逸らしてるだけなんだ。消えたって錯覚するぐらい自分の存在を薄めて、パスの中継に尽くしてるってこと。まあ、テツヤは元々影薄めではあるんだけど」
遥の説明を引き取るように、黒子は続けた。
「そういうわけなので、出れば出るほど効果はウスくなります」
凄まじい効力を発揮する黒子のミスディレクションの弱点が明らかになり、一同は絶句。
理にかなう説明ではあったが、そういう問題ではない。
「そーゆー大事なことは最初に言わんか──!!」
カントクの動揺と怒りは、黒子への容赦ないヘッドロックとして露になった。
「ちょ、リコ…」
目の前で起きている悲惨な状況に、遥は落ち着くよう掛け合うも、カントクはその手を止めない。
「すいません、聞かれなかったんで…」
「聞かななんもしゃべらんのかおのれは──!!」
技をかけられた黒子の骨が、嫌な音を鳴らし続けている。
「遥も遥よ!アンタも知って───」
同罪として、矛先が黒子から遥へと向けられたそのとき、
「TO終了です!!」
終了を示す声と笛が響いた。
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