「前半お疲れ様!後半の逆転に向けてエネルギー補給よ!!」


控え室へ戻った誠凛メンバーに振る舞われたもの。

それはカントクお手製の───タッパーの蜂蜜風呂に丸々とした黄色い球体が浸かっているだけの───レモンの蜂蜜漬けだった。


「切ってって!切ってって言ってるじゃんいつも!!」

「ちゃんと洗ったから皮ごといけると…」


カントクの料理レベルを理解していた遥は、重そうに肩から下ろしたカバンを漁り、この日のために用意していたとっておきを引っ張り出す。


「水戸部いてよかった〜〜」


その間にメンバーは、部員1料理が上手い水戸部のレモンの蜂蜜漬けに手を伸ばしていたようだが、それを一瞥すると部屋の隅で拗ねているカントクの肩を叩いた。


「リコ、今日は包丁とまな板があるから大丈夫。今からでも間に合うよ」

「遥…」


友人の計らいに目を潤ませた彼女だったが、すぐさまその双眸が細められる。

振り返って視線の先を追えば、そこには神妙な面持ちの黒子の姿が。


「黒子君は前半出ずっぱりだったから一度引っ込んでもらうけど…栄養補給はしなきゃダメよ」

「あの…後半も…このまま出してもらえませんか」

「え?」

「後半も?」


彼にしては珍しい発言に、遥からも思わず疑問符が飛び出す。

自身の特性を理解しているはすだが、何か策でもあるのだろうか───?


「確かに青峰いて黒子抜きはきちーけど…てか行けんのかよ?一試合フルにはミスディレクションは続かないんだろ?」

「…オレは反対だな。鷲の目で見てたけど、もうずいぶん効果が落ちてる。一度下がるべきだ」


日向に続いて伊月からも、やはり否定的な意見が返ってくる。

誠凛の攻撃の主柱を担う2人の意見に遥も賛成ではある、が。


「できます…いえ、やります。どうしても青峰君に勝ちたいんです」

「意気込みは買うけどよ」


無表情の奥に燃え上がる炎は、元の火種の何倍にも膨れ上がっているようだ。

黒子のやる気は花丸、しかしそれだけでどうにかなる相手ではない。


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