「桐皇学園メンバーチェンジです」
誠凛10点ビハインドでの、青峰の投入。
遅れて来た天才は間違いなく脅威であり、高くそして厚い壁だった。
「……ようテツ、久しぶりだな。どんな顔するかと思えば…いーじゃん。やる気満々ってツラだな」
「はい。桃井さんと約束しましたから」
「ははっ、言いたいことは大体分かるけどな…それはプレイで示すことだろ。…まあどっちにしろ勝ってから言えよ」
「はい」
しかもこれはただの試合ではない。
まだ若いルーキー達の、ある種因縁とも言える試合なのだ。
「できるもんならな」
「やってやらー。すぐに見せてやる!」
かつての光と今の光。
眩しく大きい輝きは同じだが、その色は全く正反対である。
「…アイソレーション…!」
必然とも思える見知った陣形に、遥は不安げに声を上げた。
青峰投入後、試合も残り数十秒というタイミングでのアイソレーション。
つまり、両チームエースの1対1である。
「大輝が上か、火神くんが上か───」
光の直接対決であるこの1対1で、今回の試合の勝敗が見えるだろう。
動いたのはボールを持つ青峰だ。
あっさり火神をぶち抜いた彼は、ヘルプの日向もあっさりと躱す。
そのままゴールへ叩き込もうとするも───走っていた火神に弾かれ攻守交代。
「速攻!!」
このチャンスを逃すわけにいかない誠凛は、すぐさま攻め込む。
得意の速攻に加え黒子のイグナイトパスで道を開くも───ゴールへ向かった火神を止めたのは、さっきとは逆に青峰。
やはり、エースを止めるにはエースをぶつけるしか手立てはないのかと唇を噛み締めたそのとき、第2Q終了のブザーが鳴り響いた。
「ありゃ?あー?アップがてらサクっと1本決めるつもりだったのに…なんだよそれったく…」
ニヤリと笑ってみせるその姿は挑発的で傲慢で、だがそれに見合う何かを明らかに秘めている。
言葉にするまでもない渇きと期待に、胸の奥が嫌な音を立てた。
「いいじゃねーかオイ!10点差つけられてどんだけヒドイかと思えば…なかなかマシじゃねーの?」
このタイミングでの前半終了は、吉なのか凶なのか───。
遥の記憶は彼らキセキの世代の初期成長過程で止まってはいるものの、今の彼が『大人しい』ということに気付かない程ではない。
もっと速く、もっと強く、もっと奇抜で、もっと規格外。
改めて後輩の存在を見せ付けられた遥は、控え室に戻る仲間たちを追いながら1人身震いした。
END
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