「おらぁ!!」


誠凛C・水戸部に競り勝ち、リバウンドを豪快に取ったのは桐皇C・若松だ。


「っしゃコラどっっ……せ───い!!!」


これまた豪快に放たれたロングパスは、PGの今吉へと繋がる。

彼が伊月のマークを赤子の手を捻るようにダブルクラッチで躱すと、桐皇に追加点。


「おおかた青峰が遅れるて聞いて、できるだけ点差つけようとか思ってたんちゃう。まあスマン。こっちの言い方が悪かったわ」


まざまざと見せつけられるのは、圧倒的な強さ。


「前座言うても青峰と比べてっちゅー話や。キミらよりは強いで。たぶん」


緊迫したコートから一転、誠凛ベンチの空気もけして明るくはなかった。

見ているだけしか出来ない分、もどかしさは募る一方だ。


「七瀬ちゃん、桐皇のスコアある?」

「うん、あるよ」


遥が用意しておいた資料を手渡せば、小金井の表情が歪む。


「うお!?やっぱり?」

「センパイ、何見てんすか?」

「予選トーナメントの桐皇のスコア」


彼の手元の資料には予選トーナメントの桐皇のスコアが全て記載されてあるのだが、並ぶ数字は見事に100以上だった。

桐皇学園は誰が相手であろうと寄せ付けない、圧倒的な得点力が武器なのである。


「つまり正邦とは真逆のチーム。超攻撃型よ」

「100点とって当たり前って感じだもんね」


この超攻撃型チームに勝利するには、それらを全て押さえ込む強力な盾か、もしくはそれらを全て上回る矛が必要というわけだ。


「スイマセン!」


目まぐるしく展開するコートは、例え一瞬であっても目を逸らすことを許さないらしい。

またも謝罪しながら放たれた桜井のシュートが、リングに弾かれる。

しかし、外へ零れ出そうになったボールを7番・諏佐が押し込んだ。

個人個人のスキルが高いからこそ、味方のケアは最小限。

連係もほぼ皆無なチームは単純に───強い。


「ウチのチームは全国から選手を集めとる。一人一人実力はある分我が強くクセもある」


遥の眉根に皺が刻まれる。

海常、秀徳と有名校を相手にしてきたが、所謂寄せ集めであるこの桐皇が最も厄介で最も相性が悪そうだ。


「ここ数年色々試したんやけどな、お手手つないで仲良うやるより、このやり方が一番しっくりくるわ。お互い同じ攻撃型チーム。面白くなりそうや」


リスタート後、ボールを操るのはPGの伊月だ。


「面白いかどうかはともかく……同じってのはどうかな?誠凛のスタイルはあくまで、全員一丸の攻撃なんで」


タイミングを見計らっていた火神のスクリーンで、伊月のマークが外れた。

そのボールは水戸部に渡ったかと思いきや、次の瞬間には主将・日向へ素早く繋がる。


「一対一の勝負はともかく」


日向の手から離れたボールが、ネットの中央を潜り落ちていった。


「試合にまで負ける気はねーぞ。主将にもそう言っとけ謝りキノコ」

「ええ!?スイマセン!」


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