スコアは47対61、誠凛14点ビハインド。
いよいよ第4Q開始───後10分で全てが終わる。
「センパイ…さっきは…その…スイマセン」
「ん?ああ気にすんな…と言いたいが、さすがにあの口のきき方はね…うん…あとでシバく」
「おい入っちゃってるよ日向!」
「あ、待って。火神くん、テツヤ」
気を取り直してコートへ向かう仲間たちを見送る傍ら、遥は後輩2人の名を呼ぶ。
先程の刺々しい雰囲気がすっかりなくなった彼らに、いつも通りの笑みを見せる遥。
「2人共、テクニカルファウルって知ってるよね?」
「「……スイマセンでした」」
声を荒げはしなかった遥ではあったが、その奥底の怒りを感じ取ったのか、火神と黒子は僅かに顔を引き攣らせながら謝罪した。
大事にはならなかったものの、先程の一件は、日向のセリフを借りるなら『あとでシバく』では済まないレベルの問題だったのである。
「まーそれはあとな!泣いても笑ってもあと10分だ。行くぜ!!」
今は目の前の試合に集中───ということで、主将の一言でお説教は後回しに。
最後の舞台に出揃った誠凛メンバーは、主将・日向に続いて、伊月、黒子、火神、水戸部。
対する秀徳メンバーは、変わらずフルメンバーだ。
「第4Q始めます」
開始早々、完全に頭は冷えたらしい火神のパスが通って誠凛追加点。
「これで49…」
コート上に視線を走らす遥の表情に、微かに余裕が戻る。
が、しかし。
緑間擁する秀徳からすればこの2点は痛くも痒くもないのか、すぐさま無駄のないリスタート。
しかもボールは───緑間だ。
「げえ!!リスタートが速い!!火神──……!!」
リスタートがどうこうと言っている場合ではなく、コート内全てがシュート範囲な緑間にボールが渡った時点で命取り。
精密機械のような精度を誇る彼が、シュートモーションに入った。
唯一緑間に対抗してみせた火神がガス欠である誠凛にとって、普通ならこれは大きなピンチなのだが、今回は違う。
『チャンス』は、『今』だ。
「火神くん…!」
───先程の黒子と火神の殴り合いの後、誠凛ベンチではある作戦が立てられていた。
黒子の『もう一段階上のパス』を活用するには、様々な条件を掻い潜る必要があるのだ。
まず絶対なのは、『捕れる人』である火神の存在。
彼がベンチに引っ込むことはないので、これについては然程問題ではない。
2つ目は高尾の『鷹の目』。
これに関しては、「オレの目もつられそうだし」という伊月の発言で概ねクリア。
3つ目は対緑間。
カントクの特異な瞳曰く、火神が跳べるのは後2回。
2回目を跳んだらコートに立っているだけで精一杯という程まで、彼は限界状態のようなのだ。
これをいつ使い、どう使うのか。
───『1回は勝負所にとっておいて、もう1回は…』
カントクの的確な指示が脳裏で復唱される。
───『第4Q最初のシュートをひっぱたけ!!』
高く跳んだ火神の手にボールが弾かれ、緑間のシュートは失敗に終わった。
「なっ…!?」
リスタート直後の緑間のシュートが阻まれたということは、誠凛からすればゴールは目の前。
すぐさま伊月のシュートが決まり、とうとう点差は10点となった。
return →
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