「第2Q終了です。これより10分のインターバルに入ります」


誠凛27対秀徳45。

その数字を受け止めた誠凛メンバーの控え室は、静かで重く暗い。

マネージャーである遥も、選手たちとはまた違う意味で重く暗かった。

今集中すべき先、考えるべきことやるべきことは分かっているのに、胸中は別のことに支配されてしまっている。

どうして、どうすれば───。


「黒子何してんの?」

「前半ビデオ撮っといてくれたそうなので、高尾君を」

「!なんか勝算あるのか?」

「さあ?」

「は?」

「『勝ちたい』とは考えます。けど、『勝てるかどうか』とは考えたことないです」


ぴくりと肩を揺らした遥は、後輩・黒子の方へ顔を向けた。

『勝てるかどうか』ではなく、『勝ちたい』───?


「てゆーかもし100点差で負けてたとしても、残り1秒で隕石が相手ベンチを直撃するかもしれないじゃないですか」


黒子は手元のビデオカメラから目を離して続ける。


「だから試合終了のブザーが鳴るまでは、とにかく自分の出来ることを全てやりたいです」


遥の中で、頼りない細さで己を保っていた糸が切れた。

それと同時に、周りの仲間たちの別の糸も、これまた別の意味で切れたようだ。


「…いや!!落ちねぇよ!!!」

「え?」

「隕石は落ちない!!てかすごいなその発想!!」

「いや…でも全員腹痛とかは…」

「つられるな!それもない!!」


先程とは打って変わってワイワイ騒ぎ出す仲間たちに目もくれず、遥は一心に愛用の携帯に指を滑らせる。

今自分が出来ること、今自分がするべきことの1つはこれに違いない───。


「まーねー、それに比べたら後半逆転するなんて…全然現実的じゃん!!」

「とにかく最後まで走って…結果は出てから考えりゃいーか!!」


視線の先には、ある意味致命的な結果が記されていたが、急いでお目当てのものに目を通すと、誠凛のマネージャーは漸く仲間たちの輪に加わった。


「いくぞ!!」

「「おお!!」」


決意新たに、遥も気合いを入れ直す。

マネージャーとして出来ることは限られてはいるものの、彼相手なら本当に『コレ』が役に立つかもしれない。


「今からじゃもう遅いかもしれないけど…」


さあ、吉に『する』か凶に『する』か───。


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