19対19の同点で第1Q終了。

しかしまだ勝負は───


「始まったばかりよ!」


何やら固い雰囲気の正邦ベンチに対し、誠凛ベンチでは気丈なカントクの声が響く。

その脇に控える遥も気を引き締め直した。

昨年とは全く異なる展開ではあるものの、相手が王者という事実は変わらない。


「陣型は攻守共このまま行くわ!ただパス回しにつられすぎてるから、ゾーンも少しタイトに。あと火神ファウル多い!」

「う…」


女子高生カントクの的確な指示と注意が飛ぶ。

今日に限らず、友人の見事な監督っぷりに、遥は感心しっぱなしだった。

だが、マネージャーとしてなら彼女も負けてはいない。

今も第三者の立場で、誰よりも冷静に火神のファウルを気にかけているのである。


「相手に合わせようなんて、腰が引けちゃ流れ持ってかれるわ。攻める気持ちが大事よ!!」

「おう!!!」


闘志を失っていない、頼もしい返事が重なった。

攻めて攻めて最後まで走り抜かなければ、掴めるものも掴めない。


「第2Q始めます」


試合再開のブザーが鳴る。

選手たちがコートへ戻っていく中、カントクと主将は『最終確認』。


「日向君。…いいのね?」

「お──」


昨年と同じことを繰り返さないために下した決断は、けして間違いではない───。

主将の背を見送りながら、遥は表情を固くする。


「うっおっ…」


第2Q開始早々、誠凛を待ち構えていたのは恐ろしいDFだった。


「すっげえ!!一段と厳しい!!」

「いよいよ東京最強のDF全開か!」


一瞬の隙も見せない重圧なDF。

これは王者・正邦が、誠凛を強敵と認めた証拠とも言えるのではないだろうか。


「もうさっきみたいに抜かせないからね!」


伊月からボールが渡ったものの、火神は対峙する津川を抜けずにいる。

───そのとき、影が動いた。


「ええ!?」


目にも留まらぬ速さで、黒子と火神が津川を抜き去る。

火神1人では難しいことも、『影』がいれば可能になるのだ。


「させん!」


すぐさまヘルプに来た岩村も黒子との連係で躱す火神。

DFを突破した彼は、十八番のダンクを叩き込んだ。


「うおおお、なんだ今のは!?」


観客から声が上がる程鮮やかな連係ではあったが───


「火神くん…?」


顕著すぎるルーキーの疲労に、遥の胸中に不安が過ぎる。

そしてその不安を増大させるかのように、ボールが火神に渡った。


「……?」


すると突如、津川のDFが甘くなる。


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