誠凛対正邦、現在のスコアは6対15。
火神の得点によりアクセルは踏み込まれたものの、王者はそう簡単に攻略出来る相手ではない。
「このパス回しは…!?」
「ええ!?なんだアレ!?」
正邦司令塔の春日から岩村まで、瞬く間にボールが渡る。
黒子も驚く程、ボールを受け取ってから投げるまでの時間が短い。
「水戸部行ったぞ!!」
岩村は水戸部を躱すと津川へパス。
それを追う火神が彼に触れてしまい、本日3つ目のファウルを犯してしまった。
「ファウル!白10番」
スコアシートの火神の欄に、またマークが追加される。
このままだと予定より早く───。
「くそ…」
思い通りにいかないためか、火神は悔しげに吐き捨てた。
正邦の大きな特徴である、余計な力を使わない独特の動き。
構えずにボールを放ったようにしか見えなかった今のパスも、古武術を応用した結果の的確なパスだった。
北の王者・正邦には、火神のような特出したエースはいないが、古武術を取り入れたOFもDFも、王者を名乗るだけある高水準のものなのである。
つまり相手は、古武術の『達人』がいるチームなのだ。
「アウトオブバウンズ!白ボール!!」
と、津川と黒子の1年同士に何かあったらしい。
「誰!?てか出てたっけ試合!?うっそだーマジ!?存在感なさすぎっしょ──!!」
「黒子テツヤです。出てました」
黒子を指差し驚く津川に、冷静に名乗る黒子。
帝光の頃に対戦済みなはずなのだが、影の薄い黒子はやはり忘れられているらしい。
「よくわかんないけど、ホケツ君的な人?じゃあそのままがんばって出ててよ!」
ご機嫌な様子で津川は続ける。
「去年センパイ達、誠凛に第1Qで20点差つけてたらしーんだ!だからオレ30点差ぐらいつけたくてさ!」
事実とは言え、無遠慮な正邦ルーキーはまた嫌なことを思い出させてくれるものである。
しかし、随分自信過剰ではあるものの、心意気としては悪くはないだろう。
───少々相手が悪かった感は否めないが。
「ガッカリしないでね!えっと…ホケツの人!」
津川は相変わらずの調子で黒子の背を叩いた。
黒子も一見、相変わらずの様子で返事をする。
「……わかりました」
この場合少し事情は異なるだが───遥は今までの付き合いで、つくづく思うことがあった。
「ガッカリしないようにがんばります」
黒子テツヤを敵に回すのなら、それなりの覚悟が必要なのである。
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