I・H都予選Aブロック準決勝、誠凛対正邦。
北の王者相手に、誠凛はまだ一得点も出来ずにいた。
ボールを持つ火神は、津川のマークを掻い潜れない。
「うおお、すげぇ圧力!!なんだアイツ!?」
外から見ても津川の圧力は群を抜いているのだから、それを目の前にしている火神は相当厳しいはずだ。
「火神持ちすぎだ!よこせ!!」
常に冷静にコート上を見渡している誠凛PG・伊月が駆け寄る。
自身をマークしていた春日を躱すと、伊月はゴールへ駆け抜けた。
「駄目───」
遥の声はコートまで届かない。
一見フリーのようだったが、伊月のレイアップは突如現れた正邦C・岩村に叩き落とされてしまう。
「!?」
「甘いな。その程度の攻めでうちのDFは崩せない」
分かってはいたが、立ち塞がる壁は───厚い。
「まだ誠凛点が穫れない!!」
「すげぇぇ」
現在の誠凛の弱点に成りうる特徴の1つとして、『スロースターター』が挙げられる。
そのスタートを切り、チームのアクセル踏み込むのはルーキー・火神。
彼は津川のDFにより、満足に動けていないのだ。
「おい津川、ハリキるのはいいけど後半バテんなよ」
声をかけた先輩に対し、
「大丈夫っスよー。思ったほどじゃないんで!」
と軽く返してしまうあたり、張り切ってはいるものの、まだまだ底を見せていないということだろうか。
「なんだとテメッ…」
「チャージング!白10番!!」
頭に血が昇りやすい火神はまんまと判断を誤り、ミスを犯す。
遥の手元のスコアシートにマークが増えた。
「あのアホは〜、どんだけ頭に血が昇りやすいの!?」
「火神──!落ち着け!!」
エース火神、2つ目のファウル。
血気盛んなせいもあるだろうが、何より正邦の独特の動きに全くついていけていない。
ボールが黒子に渡る。
「……!」
───が、目を瞠った黒子はパスを躊躇った。
隙のないDFのせいで、パスコースがないのだ。
「凄……」
これには遥も感心せざるを得なかった。
正邦のDFは全員マンツーマンだが、その圧力が桁違いに凄まじい。
現に誠凛は、パスすらまともに出せていないのだ。
大きく息を吐いた遥は、横目でカントクを見やる。
ばつの悪そうな表情を浮かべる彼女は、遥の視線に気付くと首を縦に小さく振った。
このままでは流れを取り返せないだろう。
「誠凛タイムアウトです」
return →
[1/3]