「あれ、DVD…」


昨晩のリコとの話では、授業終了後2人でDVDを教室に運んでスカウティングをする予定だったはずなのだが、その肝心のDVDが見当たらない。


「試合のDVDなら、昼休みにカントクが持っていきましたけど…」

「運ぶの手伝わされたし」


黒子の隣にいた火神も頷きながら言った。

ちょうど時間が出来たため先に済ませてしまったのだろうが、此処にDVDがないとなると、遥は出来るだけ早く教室へ戻らなければならなくなる。

もしかしたら、もう皆揃って待っているかもしれない。


「そっか…ありがとう。お邪魔しました」


不思議そうな表情の後輩たちに礼を言うと、遥は来た道を慌てて引き返す。

小走りで廊下を進んで、階段も急ぎ足で上った遥が教室に到着したとき、案の定そこにはメンバー全員が揃っており、いつでもスカウティングを開始出来るという状態だった。


「リコ、DVD昼休みに運んだんだって?」

「あ、ゴメン。遥に言うの忘れてた」

「放課後一緒にやるって言ってたのにー。結局リコに任せちゃった」


遥は最前列に着席している伊月の横に腰を下ろす。


「今からだよね?」


通路を挟んだ隣の机に腰を預けている日向に訊ねると、彼は「ああ」と返して教卓上のダンボールを顎で指した。

それいっぱいに詰まっているのは、本日必要不可欠な試合記録DVDだ。


「結構量あるしな。さっさと見ていくか」


昨年の分と今年の分とで、DVDは相当な枚数となっている。

今からそれらを1枚1枚確認し、そのスタイルやスキルを話し合って見習うべき箇所や対策を割り出していくのだ。


「じゃ、始めるわよ」


カントクの合図のもと、スカウティングが始まった。

昨年対戦済みの見知ったメンバーに混ざるルーキーは、両校合わせて3人。

そのうち2人は、昨日見かけたばかりで記憶にも新しい、緑間と高尾である。

片方は『キセキの世代』と有名であるし、あの選手層の厚い秀徳でレギュラーをもぎ取る1年なのだから、相当のやり手なのは言わずもがな。

問題はもう1人、今ちょうど映っている正邦の1年レギュラーだ。

相手選手が手も足も出ない、とてつもないレベルのDF。

その坊主姿の彼に遥は見覚えがあった。

帝光時代に対戦済みの選手───バスケを始めたばかりとは言え、優れたセンスを発揮していたあの黄瀬を止めた人物である。

さすが王者と呼ばれているだけあって、個人のスキルもかなりのものだ。


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