I・H予選5回戦対白稜高校。
残り時間3分を切った状態で、スコアは83対83。
「行け行け誠凛!」
「押せ押せ誠凛!!」
応援にも熱が入る。
「───俊!」
遥は思わずベンチから腰を浮かせて叫んだ。
正念場、ドリブルで相手選手を抜いた途端、伊月が倒れ込んだのだ。
「レフェリータイム!!」
遥は不安げにチームメイトかつクラスメイトな友人を見つめていたが、足が攣っただけらしく大したことはなさそうである。
「伊月君交代す…」
「大丈夫。あと2分ちょいだろ?」
カントクの言葉を遮り、伊月は立ち上がった。
「鶴もよく足つるらしいし」
「大丈夫だ!行くぞ!!すいません審判、再開お願いします!」
「キビし!!」
伊月のダジャレに日向のツッコミ。
いつもの流れを見せる余裕はあるようだが、選手たちの表情は暗い。
疲労はかなり大きいのだろう。
唇を噛み、遥はベンチへ座り直した。
「だアホ!!全員声出てねーよ!!」
日向の叱咤がコートに響く。
「疲れてんのは相手も一緒だ!!おとなしくなる前にもっとマシな言いワケ考えろ!!どいつもこいつも草食男子かバカヤロー!!」
「草…!?おう!!」
疲れきったこの状況でこの統率力。
彼のおかげで活気を取り戻したのは、選手たちだけではない。
戦っているのはカントクだってマネージャーだって、ベンチに控える選手だって一緒だ。
「いけ───!!」
疲れからかキレの落ちた黒子のパスが小金井へ繋がる。
しかしシュートはリングに弾かれ、オフェンス・リバウンド。
それを火神が押し込んだ。
「試合終了─────!!!」
スコアは89対87、I・H予選、誠凛高校準決勝進出決定である。
*
翌日。
長引いたHRが終了するや否や、遥は部室に向かい駆け出した。
今日は王者二連戦のためのスカウティングの日なのだ。
「つかちょうどいいや。ちょっと見せてもらおうぜ」
開いていく部室の扉の隙間から、何者かの声が漏れてくる。
まさか人がいるとは思っておらず、遥は扉に手をかけたまま身を強張らせた。
「なんだ、火神くんとテツヤいたんだ」
「七瀬センパイ!?」
いつもの調子で小さく頭を下げた黒子に対し、火神はやけに驚いているようだが、遥が来る前に何かあったのだろうか。
後輩2人から部室内に目線を移し、遥は首を傾げる。
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