「今日今んとこ5本中5本か。緑間はずいぶん調子いいみてーだな」
「そうなんですか?」
「いや知んねーよ!つかオマエの方がわかんだろが!」
背後で繰り広げられるルーキー2人の会話に思わず振り返ろうとした遥だったが、
「さぁ…?彼が外したとこ見たことないんで…」
渦中の人物がちょうどタイミング良く動いたために思いとどまる。
緑間にボールが渡ったのだ。
「外したとこ見たことない…?黒子、まさかそれって…」
緑間の左手から放たれたボールは頭上高くへ。
異常な程高い急角度の放物線を描いたそれは、緑間本人が背を向ける中、見事にネットを潜り落ちた。
元チームメイトの黒子と遥の声が重なる。
「緑間君はフォームを崩されない限り100%決めます」
「真太郎はフォームを崩されない限り100%決めるよ」
彼曰く『人事を尽くした』シュートは、入って当たり前。
「うっ…おっ、おおお…!」
「すげえ100発100中!?これが…『キセキの世代』No.1シューターか!!」
会場が驚愕と絶望で沸き返る。
無意識に溜め息が出るような群を抜く完成度の3Pシュートに、見覚えのある遥ですら胸が詰まる程だ。
圧巻であるが故、味方としては心強い得点源だがしかし、敵としては───。
「……、マジかよ…」
「えげつないシュート打つな〜。てか、入る前に緑間DF戻ってるし、速攻できなくね?」
緑間は自身の3Pに絶対の自信を持っている。
そのため、高く放られたボールが空中にいる間にDFへ戻ってしまうのだ。
つまり相手チームは速攻不可能、秀徳は常に有利な状態でリスタート出来てしまう。
「着弾までの時間が異常に長い…。こりゃ精神的にもクるわね…」
「外で見てこれだからね」
視線を落としたまま遥は返した。
カントクの言う通り、彼のシュートはその特性のためにコート上の選手たちへのダメージが非常に大きい。
ゴールが決まる度に志気は削がれ、その命中率と得点力に勝利が見えなくなっていく。
「試合終了ー!!」
「うわああ圧倒的…、今年の秀徳は…強え!!」
結局、試合は153対21と、秀徳が歴然とした差を見せつけて終了となった。
対戦校のレベルを見れば当然の結果かもしれないが、それでもこの点差はそう見れるものではない。
「…………」
退場途中、緑間が2階観客席───誠凛の方へ顔を向ける。
その瞳がどんな意味で何を映したのかは分からないが、遥は静かに他校の後輩を見据えていた。
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