「…いやー!言うね!あれっしょ?キミ真ちゃんの同中っしょ?」
空気を読んでか読まずか、黒子の肩に腕を回して話に飛び込んできたのは、つい先程悔しい過去を思い出させてくれた高尾だ。
黒子とは初対面のようだが、その振る舞いは驚く程友好的である。
「気にすんなよ。アイツ、ツンデレだから!ホントは超注目してんだぜ〜!?」
「いつも適当なこと言うな高尾」
そのときふと、緑間の文句を軽く受け流した高尾と、少し離れたところから彼らを眺めていた遥の目が合った。
この間顔と名前を覚えたばかりの彼は、愛想良く嬉しそうな笑みを浮かべながら手を振る。
遥も思わず手を振り返した。
「遥サーン!また話しましょーねー!」
「オイ、いい加減にしろ」
「話したっていーじゃん別に。遥サンのこと訊いても、真ちゃん何も教えてくんないしさ」
眉間に皺を寄せている緑間に物怖じせず、軽い調子で言い返す高尾。
火神が吹っかけた1年同士の挨拶のはずが、秀徳1年2人対誠凛1年2人プラス全員と顔見知りの先輩マネージャーと、何やらややこしくなってきた。
「いつまでしゃべってる2人共!行くぞ!」
「ヘーイッ」
まさに鶴の一声。
秀徳主将のおかげで、宣戦布告の意味を持つ挨拶が終わりへ向かう。
「…なんか、黒子君に言われちゃったんだけど…」
王者相手に啖呵を切れなかったからか、カントクはどこか不完全燃焼のようだ。
「まあいーじゃん。オレらが思ってることそのままだし。七瀬の交友関係にはもうツッコまねーぞ」
「私、何かボケたっけ?」
「…………」
日向も、まさか遥が他校の無名なルーキーと知り合いとは思っていなかっただろう。
実際高尾とは海常で偶然出会った際、一言二言言葉を交わした程度なので、知り合いと言えるか微妙なラインではあるが。
「…黒子見ておけ。オマエの考えがどれだけ甘ったるいか教えてやろう」
これで最後だと、緑間は眼鏡のブリッジを押し上げながら、かつてのチームメイトに傲慢な捨て台詞を吐く。
その後律儀に、遥に頭を下げてから背を向けた。
「真太郎……」
これから行われる秀徳の試合を見学する時間は、十分ある。
彼のバスケもまた、変わってしまっているのか───。
不安と期待を胸に、遥は離れていく後輩の背を眺めていた。
END
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