I・H予選1回戦、VS新協学園、火神の活躍により勝利。
続く2回戦、VS実善高校、黒子を温存したにも関わらず118対51で圧勝。
3回戦、VS金賀高校、昨年東京都ベスト16の強豪ではあるが、危なげもなく勝利。
そして本日、いよいよI・H都予選4回戦を迎えることとなった。
アップのためにコートへ出てきた誠凛メンバーであったが、黒子と火神以外の1年生たちは落ち着かない様子で辺りを見渡している。
「広ぇ〜……」
「ここ本当に学校の体育館スか?」
彼らの疑問も納得な程、この体育館は広いのだ。
ゆったりと2つ並んでいるバスケットコートの向こう側のそれを眺め、遥は小さく息を吐く。
1年生たちとは違った意味で胸がざわつき、落ち着かない。
もうすぐ、此処に───。
「都内有数のマンモス校だからね。おかげで今日はすごいもん見れるわよ」
「へ?」
意味深なカントクの返事に、1年生たちは疑問符を返す。
説明のため口を開いたのは、主将の日向だ。
「決勝リーグを経て選ばれる東京都の代表3校は、ここ10年ずっと同じ3校しかない」
遥は咄嗟に目を伏せた。
バスケ初心者もいる1年生たちは知らなくても仕方がないが、マネージャーの遥からすればこれらは基礎知識である。
そしてその代表3校は、誠凛バスケ部の2年として忘れられない相手でもあるのだ。
「東の王者・秀徳、西の王者・泉真館、北の王者・正邦。1位は毎年変わるが、力が拮抗してるから4位以下はよせつけない、東京都不動の三大王者だ」
秀徳、泉真館、正邦。
胸中で復唱すれば、鮮明に蘇る記憶。
「今日ここは2会場分試合をやるから、隣のコートに普通は他会場でやるシード校が来る。…つまり」
シード校は、一般的にイコール『強豪校』のことである。
先日偶然会ったときはカエルのおもちゃだったが、今日は何を拝むことが出来るだろうか。
「『キセキの世代』緑間真太郎が加入し、今年北と西の制圧を目論む東の王者・秀徳高校が出てくる…!」
遥にとっては帝光時代の親しい後輩の1人であり、『キセキの世代』と名高い天才プレイヤーでもある、緑間真太郎。
今朝のおは朝を見ていなくても、彼を見れば蟹座のラッキーアイテムが何かは嫌でも分かるはずだ。
「けど…先輩達も去年決勝リーグまで行ったんですよね!?」
「まあ…手も足も出なかったけどな」
2年生を取り巻く空気が変わる。
文字通り『手も足も出なかった』記憶は、皆の深奥にしっかり根付いていた。
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