時間はあっと言う間に過ぎ去り、誠凛VS新協学園も終盤戦。


「ん…?」


試合に気を配っていた遥は妙な感覚に首を傾げた。

『お父さん』がシュートを躊躇い味方にパスをしたかと思いきや、シュートを撃たなく、いや、撃てなくなってきたのだ。


「火神すげえ!!こらえるどころか全然負けてねー。カントク、特訓の成果出てるっスよ!」


確かに、カントクの的確な指示による特訓の成果なのだろうが───1年生の歓喜の声に、カントクはぎこちなく答える。


「…え…と、てゆーか…ですぎ、かな」


入部当初から火神のバスケセンスは即戦力エース級であったし、その挑戦的な負けん気も買いだった。

バスケ界に様々な意味で嵐をもたらした『キセキの世代』に屈し諦めるのではなく、敗北を味わわせることも可能だと思わせてくれるような人物なのである。


「火神くん…」


遥は、隣で静かに待機している火神の相方に目を向けた。

視線に気付いたのか、まっすぐコートを見ていた彼が振り返る。

暫し間を置き、何を考えているのか分からない瞳を瞬かせた黒子は小さく頷いた。


「…………」


彼からすれば、先輩と目が合ったため、とりあえず行った会釈だったのかもしれない。

だが、遥を二律背反に陥らすには十分な行動だった。


「新協学園3P来たぁ!!」


突如周りが騒がしくなる。

別のことに気を取られている間に、新協主将が3Pを決めたようだ。


「一ケタ!まだわかんねーぞ!!」


スコアは51対60で誠凛リード。

しかしバスケにおいて一桁の差など、あってないようなものである。

つまり、いつ逆転されてもおかしくはない。


「黒子君!ラスト5分行ける!?」

「…むしろ、けっこう前から行けましたけど…」


厳しい表情で振り返ったカントクに、黒子は淡々と答える。


「ゴメン!じゃ、ゴー!!」

「行ってらっしゃい」

「…行ってきます」


ラスト5分、黒子がコートに戻ったことにより、試合は更に激しさを増した。

今まで引っ込んでいた効果で、彼の見えないパスは面白い程通る。


「っくそ、また出やがった…。どーなってんだあのパス!?」


黒子に翻弄される、追う新協学園。


「最後まで気ィ抜くな!攻めるぞ!!」


手を緩めない、追われる誠凛。

そしていよいよ、残り時間から見て本日最後の『お父さん』対火神だ。


「ヤダ!負けルのゼッタイヤダッ!」


『お父さん』はシュートを撃つため飛び上がった。


「おおお!!」


高い───が、しかし。


「キセキの世代にガッカリとか言ってたけど、チョーシこきすぎだね!アイツらの方が……」


火神も飛び上がる。

上へ高く伸びた腕は、とうとうボールを叩き落とした。


「断然強ーわ!!」

「試合終了─────!!!」


驚きも覚めぬまま、試合終了の声が響き渡る。

新協学園67対誠凛79。


「誠凛高校の勝ち!!」

「「ありがとうございました!!!」」


試合終了後、火神と『お父さん』の間で何かあったようではあるが───何はともあれ、誠凛高校I・H都予選初戦突破である。




END


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