「確かに高いね…」
遥は、中学時代からの後輩を視界に入れながら呟く。
彼を先発にしたのは当たりかもしれない。
「フリー!!もらった!!」
誠凛ボールは伊月から日向へ渡った。
得意のシュートを放った日向だったが、
「…マジかよ!?」
そのボールは『お父さん』にあっさりカットされてしまう。
相手のシュートは高すぎて届かず、こちらのシュートは放っても全て『お父さん』の守備範囲のようだ。
「デタラメだろあんなの…。やっぱズリーよ外国人選手なんて」
思わずそう言ったのは、誠凛ベンチの1年生である。
ちょうどその前を、新協主将が通りかかった。
「誠凛さんってアレ?スポ根系?」
「は?」
誠凛主将・日向が聞き返す。
「いるんだよね、よくさ〜。『助っ人外国人ズルイ!』みたいな?別にルール違反とかしてねーし」
そもそもルール違反ならば今この場にいないという話だが、公式で、外国人選手は2名までベンチ入りを許可されているのだ。
ズルイも何も、「文句があるならそっちも外国人入れれば?」と言われたらそれまでなのである。
「強い奴呼んで何か悪いの?楽だぜー、アイツにボール回しゃ勝手に点入ってくし。楽して勝つのがそんなにイヤかね?どう?」
別に『お父さん』に関しとやかく言うつもりはなくとも、新協主将の言い草は気分のいいものではない。
遥は僅かに眉根を寄せる。
『楽して勝つ』のが嫌なのではなく、バスケを軽く見ている風なのが気に食わないのだ。
信頼ではなく人任せな、彼らのバスケへの印象も悪くなっていく。
「楽かどうかは知んねーけど、そのポリシーなら逆に文句言うなよ?」
落ち着いた様子で日向は返した。
「とんでもねー奴らなら、誠凛にもいるし」
「は?」
呼んではいないがやってきてしまった『とんでもねー奴ら』───それは勿論、誠凛期待のルーキー、火神と黒子のことである。
スコアは8対3、誠凛5点ビハインド。
いよいよ、別メニューの成果を披露するときがきたらしい。
『お父さん』がシュートを放つ。
「落ちた!!リバン!!」
しかしボールはリングに弾かれてしまった。
誰が見ても分かる程、急激に精度が落ちている。
カントクはしたり顔で言った。
「そう簡単には入らないわよ。なんたって…火神君がお父さんに自分のプレイをさせてないからね!」
「自分のプレイを…?」
相手のゴールを防ぐにあたり、ボールに届くに越したことはない。
が、届けばいいという問題でもないのである。
今回はそれに、寡黙すぎるCが一役買っていた。
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