体育館へ入ると皆素早く準備を済ませ、アップを始めた。

誠凛高校対新協学園の試合は第一試合、10時からなのである。


「すみません、遅れましたー」


マネージャー業務に勤しんでいた遥の耳に、ふと流暢な謝罪が届いた。


「日本低イ、ナんデも…」


顔を上げてそちらを向けば、頭をぶつけたらしい『お父さん』が、今度は片言で文句を言っている。

聞いていた通り、その姿は確かに大きく、そして長い。


「何やってんだ早く来い!」

「すみません、遅れましたー」

「なんでそこだけ流暢なんだよ!!」


相手チームが全員揃ったところで、新協の主将が日向に声をかけた。


「あ、そういえば海常に勝ったってマジ?」

「いや…練習試合でっスけど」


関東屈指の強豪校かつ『キセキの世代』が加入した海常高校に、歴史の浅い誠凛高校が勝ったという番狂わせは、あちこちに広がっているらしい。

中学時代圧倒的な力を保持し、無敗を誇った『キセキの世代』の1人に勝ったのだから、彼らを知る者に注目されないはずもないのだが。


「…なんだー。思ったよか大したことないんだ」

「カイジョー?」

「『キセキの世代』入ったとこ!教えたろ!」


新協主将・谷村は馬鹿にした様子で言ってから、『お父さん』に説明してやった。

この発言は誠凛を見下しているのは勿論、海常を、何より『キセキの世代』を見下している発言だ。


「キセキノセダイ…負け…?キセキノセダイに勝ツため呼バれタのに、ソんなガッカリダよ、弱くて…」


誠凛バスケ部マネージャーとして、また元帝光バスケ部マネージャーとして聞き逃せない言いぐさに、遥の双眸が冷たく細められる。

海常はけして弱くなかった。

黄瀬だって、他の『キセキの世代』だって、勿論誠凛だって、けして弱くない。

と、トラブルメーカーらしい『お父さん』が、突如黒子を抱え上げた。


「ダーメですヨ、ボクー。子供がコート入っちゃあ」


両脇に腕を差し入れられて持ち上げられている黒子は、『お父さん』との対比から、どう見ても『子供』だ。


「どっから連れて来…バッ…!そりゃ相手選手だよ」

「センシュ…!?」


新協主将に注意されたため解放された黒子の前で、2人は無遠慮な会話を繰り広げ続けた。


「あんな子供いルチームに負け?キセキノセダイてミんな子供?」

「ハハッ、かもな!」


去っていく後ろ姿を眺める遥の表情は険しい。

黒子の子供扱いに、体を震わせて笑いを堪えている部員たちとは正反対だ。


「………」


気にせず聞き流せばいい話ではあるが、遥の場合、親しい後輩を含む知り合い複数が絡んでいるため、そう簡単に割り切れない。


「正直…色々イラッときました」

「何気に負けず嫌いなトコあるよな、オマエ」


静かに怒りを募らせている黒子に声をかけると、火神は着ていたTシャツを脱ぎ捨てた。

黒子もTシャツを脱ぐ。

下から現れたのは、誠凛バスケ部レギュラーの証。


「んじゃ、まあ…子供を怒らせるとけっこー怖いってコト、お父さん達に教えてやるか!」




END


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