「じゃ、順番に…誰からいく!?」

「いやー、今回はやっぱ黒子だろ」

「…じゃあ…いただきます」


興奮した面持ちで相談した結果、まずは黒子からとなったらしい。

彼らの会話から考えて、おそらく黒子が影の薄さであの戦場を掻い潜ったのだろう。


「……!これは…」


遥は期待に満ちた眼差しで、黒子を見つめる。

あれを食べた彼がどんな反応をするのか───


「めっちゃおいしいです」

「うお!?こんな幸せそうな黒子初めて見た!!」


───思った以上の反応だった。


「オレも…うおウマッッ!!味の調和ってコレ!?」

「ジューシィな豚にフォアグラの甘みとキャビアの酸味が…」

「何言ってんの!?」


1年生は皆いいリアクションで食べ進めているが、良く食べるという印象の強い1人が見当たらない。


「オレはでかい方がいいや」


と思いきや、黙々と、それこそまた次元の違うものを美味しそうに頬張っていた。


「なにソレ!?」


100cmのスーパーロングBLT、1000円也。

これぐらいでないと、彼の大きな胃は満たされないようだ。









放課後、体育館内に日向の声が響いた。


「集合───────!!」


ジャージ姿で首から笛を下げ、積極的に練習の指揮をとっていた遥も小走りで駆け寄る。


「もうすぐI・H予選だ!!去年はあと一歩及ばなかったが、今年は絶対行くぞ!!」


遥の表情に影が差した。

思い出したくない記憶ではあるが、だからこそ鮮明に思い出して乗り越えなければいけない。


「強豪がひしめきあってるが特に…同地区で最強最大の敵は秀徳高校!!」


ただでさえ強豪校と名高い秀徳高校には、今年、海常高校と同じく『キセキの世代』が加入している。

そんな彼らに勝たなければ、全国への切符はないというわけだ。


「秀徳に挑むためにもまずは初戦!!気ィひきしめていくぞ!!」

「「オウ!!」」


黄瀬涼太の次は、あのNo.1シューター緑間真太郎が相手。

マネージャーとは言えど、遥もうかうかしていられない。


「…そういえばカントクはどこスか?今日は七瀬センパイが練習見てるし…」

「ああ…すぐ近くで1回戦の相手が練習試合してるらしくて、偵察行ってるよ」


そう返した日向の隣で、遥は苦笑混じりに頷いた。


「私が行くって言ったんだけど…結局リコが見ることになるしね」


1度の敗北も許されないI・Hが、すぐそこまで迫っている。

遥は静かに歯を食いしばった。




END


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