「じゃ、順番に…誰からいく!?」
「いやー、今回はやっぱ黒子だろ」
「…じゃあ…いただきます」
興奮した面持ちで相談した結果、まずは黒子からとなったらしい。
彼らの会話から考えて、おそらく黒子が影の薄さであの戦場を掻い潜ったのだろう。
「……!これは…」
遥は期待に満ちた眼差しで、黒子を見つめる。
あれを食べた彼がどんな反応をするのか───
「めっちゃおいしいです」
「うお!?こんな幸せそうな黒子初めて見た!!」
───思った以上の反応だった。
「オレも…うおウマッッ!!味の調和ってコレ!?」
「ジューシィな豚にフォアグラの甘みとキャビアの酸味が…」
「何言ってんの!?」
1年生は皆いいリアクションで食べ進めているが、良く食べるという印象の強い1人が見当たらない。
「オレはでかい方がいいや」
と思いきや、黙々と、それこそまた次元の違うものを美味しそうに頬張っていた。
「なにソレ!?」
100cmのスーパーロングBLT、1000円也。
これぐらいでないと、彼の大きな胃は満たされないようだ。
*
放課後、体育館内に日向の声が響いた。
「集合───────!!」
ジャージ姿で首から笛を下げ、積極的に練習の指揮をとっていた遥も小走りで駆け寄る。
「もうすぐI・H予選だ!!去年はあと一歩及ばなかったが、今年は絶対行くぞ!!」
遥の表情に影が差した。
思い出したくない記憶ではあるが、だからこそ鮮明に思い出して乗り越えなければいけない。
「強豪がひしめきあってるが特に…同地区で最強最大の敵は秀徳高校!!」
ただでさえ強豪校と名高い秀徳高校には、今年、海常高校と同じく『キセキの世代』が加入している。
そんな彼らに勝たなければ、全国への切符はないというわけだ。
「秀徳に挑むためにもまずは初戦!!気ィひきしめていくぞ!!」
「「オウ!!」」
黄瀬涼太の次は、あのNo.1シューター緑間真太郎が相手。
マネージャーとは言えど、遥もうかうかしていられない。
「…そういえばカントクはどこスか?今日は七瀬センパイが練習見てるし…」
「ああ…すぐ近くで1回戦の相手が練習試合してるらしくて、偵察行ってるよ」
そう返した日向の隣で、遥は苦笑混じりに頷いた。
「私が行くって言ったんだけど…結局リコが見ることになるしね」
1度の敗北も許されないI・Hが、すぐそこまで迫っている。
遥は静かに歯を食いしばった。
END
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