「七瀬センパイ、あれ…」
「…あれ?」
火神の視線の先、日本では希少なストリートのバスケットコートの先に、遥もよく知る後輩たちの姿が見て取れた。
1人は黄色い頭の、様々な意味で目立つ制服姿の彼。
そしてもう1人は、お目当ての誠凛ルーキーだ。
「涼太とテツヤ…だよね。行こっか」
「っす」
顔を見合わせてから、バスケットコートを取り囲むフェンスをぐるりと迂回し、話し込んでいるらしい2人に近付く。
「けど1つ言えるのは…黒子っちが火神を買う理由がバスケへの姿勢だとしたら…」
黄瀬の声がはっきり耳に届く距離まで来たところで、自分の名前が出たからか、火神は進むのを躊躇った。
遥は息を飲む。
「黒子っちと火神は…いつか…決別するっスよ」
「……!?」
怪訝な表情を浮かべている火神の上着を引っ張り、一歩下がるよう遥は促した。
手前にいる黒子は背中しか見えないが、奥にいる黄瀬はこちらを向いているため、もしかしたら気付かれるかもしれない。
盗み聞きしてしまうことになるが、遥は今この会話を遮ってはいけないような気がしていた。
「オレと他の4人の決定的な違い…それは身体能力なんかじゃなく、誰にも…オレにもマネできない才能をそれぞれ持ってることっス」
遥の脳裏に浮かぶのは、中学時代の彼らの姿。
ここ1年、雑誌などを通してでしかまともに姿を見る機会がなかったため、記憶はそこで止まっているのだ。
「今日の試合で分かったんス。火神はまだ発展途上…。そして『キセキの世代』と同じ…オンリーワンの才能を秘めている」
今日、あの場にいた誰もを驚かせた火神のプレイは、確かに目を瞠るものがあった。
遥もよく知る、『キセキの世代』と重なる程に。
「今はまだ未完成な挑戦者っス。ただガムシャラにプレイして、強敵と戦うことを楽しんでるだけのね」
さすが『キセキの世代』の一員とでも言えばいいのか、彼らと同じ舞台にいた黄瀬には何か感じるところがあったらしい。
遥は目を伏せた。
ここまでくれば、黄瀬が何を言いたいのかは予想出来てしまう。
「けどいつか必ず…『キセキの世代』と同格に成長して、チームから浮いた存在になる。その時火神は…今と変わらないでいられるんスかね?」
← return →
[2/5]