「しまっ…」
残り7秒、バランスを崩した日向の前で、海常4番・笠松がシュートを放った。
これが決まれば終わり───だがしかし、そのボールは飛び上がった火神に奪われる。
「なっ…」
高さでは火神の方が圧倒的に有利だ。
「うわぁあ穫った!!」
「マジかよ!?」
残り時間からしても体力からしても、これが本当に最後の攻撃。
「走って───!!」
遥も力の限り叫ぶ。
最後の最後、火神と黒子の前に立ちはだかるのはやはり黄瀬だ。
「黒子!!」
火神は黒子にボールを回した。
パス回しに特化した黒子に、シュートは有り得ない。
それは黄瀬も十分承知しているはずだ。
つまり火神から黒子、そして黒子から火神へのリターンしか手はない。
だが、黒子は高くボールを放っただけだった。
「…パスミス!?」
残り1秒。
「……じゃねえ!!アリウープだ!!」
「させねぇスよ!!」
火神を止めるために黄瀬は飛び上がる。
彼ら2人の高さは変わらない。
しかし何故か、黄瀬の体が先に落ちていく。
このままだと黄瀬は、火神を止めることが出来ないどころか───。
「………!」
遥は目を瞠った。
火神の尋常ではない滞空時間にも驚かされていたが、何よりその彼の意図に気付いたからだ。
単純ではあるが非常に有効でもあるこの方法は、中学時代に黄瀬をコート内で見てきた黒子の提案だろう。
「嘘…本当に…」
周りの歓声により、遥の震える声は吐き出されたと同時に掻き消されていく。
信じられない話だが、終止符を打つに相応しい形で今、キセキの世代が負かされようとしていた。
「テメーのお返しはもういんねーよ!!なぜなら……」
黄瀬は見た技を瞬時に自分の中に取り込み、己の技として塗り替えた上で披露してみせるプレイヤーである。
だからこそ、異質な才能を持つ黒子が弱点となり、天敵でもあった。
だがもう1つ、ある意味で彼の天敵となってしまうものがある。
黄瀬は見なければ返せない、では見ても返す時間がない場合はどうだろうか。
試合終了と同時───ブザービーターならば。
「これで終わりだからな!!」
誰もが固唾をのむ中、激しい音と共に、黄瀬の目の前でボールはネットを潜っていった。
END
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