「わかったわ…!ただし、ちょっとでも危ないと思ったらスグ交代します!」









第4Qも残り5分。

黒子が復帰してから再度誠凛の攻撃力は上昇し、取りつ取られつの攻防を繰り広げていた。


「慣れかかってたのに、また元のウスさに戻ってやがる…!第2・3Q丸々20分ひっこんでたから…!?」


一度戦線離脱したため、ミスディレクションの効果はすっかり戻っているらしい。

黒子のパスは海常陣を掻い潜り、確実に点を稼いでいく。


「うおおマジか!?差が詰まってる…!?」


そしてついに───


「まさか…ウソだろ…!?」

「同点…!?」


主将・日向のシュートにより、82対82の同点となった。

周りの盛り上がりはピークである。

加えて、海常の動揺も。


「ここからが正念場…」


遥の体にも力が入る。

この局面での同点───こうなればもう根比べ、どんな小さなミスも命取りだ。


「同点だぁー!?」

「誠凛ついに追いついた!!」


そのとき、相手チームのエースの雰囲気が変わった。

目で追えない速さで黒子を抜き去ったと思いきや、火神のヘルプ、その後のバックチップも上手く躱した彼は、凄まじい勢いでダンクを叩き込む。


「オレは負けねぇスよ。誰にも、黒子っちにも」


黒子を見下し、禍々しいオーラを纏う黄瀬の姿に、遥は背筋が寒くなるのを感じた。

素直で無邪気ないつもの彼とはまた別の、本当の彼。

負けを知らない『キセキの世代』の本領発揮だ。


「やべえな…全員気ィ入れろ。こっから試合終了まで第1Qと同じ…」


ベンチで見ている遥ですら感じる威圧感を、コート上にいるメンバーが感じていないはずがない。

日向の言う通り、これからは。


「点の取り合いだ!!」


叱咤が飛び交う。

激励が飛び交う。

火神が点を取る。

黄瀬が点を取る。

選手が走る。

監督が叫ぶ。


「止まらないで!」


残り15秒、98対98。


「時間ねぇぞ!!当たれ!!ここでボール穫れなきゃ終わりだ!!」


日向に奮起された誠凛は積極的に前へ出る。

激しい行き交いに、見ている方も息をつく暇がない。


「守るんじゃダメ!!攻めて!!」


カントクの指示が飛ぶ。

もし同点で終われば延長戦。

しかし、誠凛にはそれに耐えうる体力は残っていない。

今勝敗を明らかにしなければ、どっちみち負けてしまう。


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