「わかったわ…!ただし、ちょっとでも危ないと思ったらスグ交代します!」
*
第4Qも残り5分。
黒子が復帰してから再度誠凛の攻撃力は上昇し、取りつ取られつの攻防を繰り広げていた。
「慣れかかってたのに、また元のウスさに戻ってやがる…!第2・3Q丸々20分ひっこんでたから…!?」
一度戦線離脱したため、ミスディレクションの効果はすっかり戻っているらしい。
黒子のパスは海常陣を掻い潜り、確実に点を稼いでいく。
「うおおマジか!?差が詰まってる…!?」
そしてついに───
「まさか…ウソだろ…!?」
「同点…!?」
主将・日向のシュートにより、82対82の同点となった。
周りの盛り上がりはピークである。
加えて、海常の動揺も。
「ここからが正念場…」
遥の体にも力が入る。
この局面での同点───こうなればもう根比べ、どんな小さなミスも命取りだ。
「同点だぁー!?」
「誠凛ついに追いついた!!」
そのとき、相手チームのエースの雰囲気が変わった。
目で追えない速さで黒子を抜き去ったと思いきや、火神のヘルプ、その後のバックチップも上手く躱した彼は、凄まじい勢いでダンクを叩き込む。
「オレは負けねぇスよ。誰にも、黒子っちにも」
黒子を見下し、禍々しいオーラを纏う黄瀬の姿に、遥は背筋が寒くなるのを感じた。
素直で無邪気ないつもの彼とはまた別の、本当の彼。
負けを知らない『キセキの世代』の本領発揮だ。
「やべえな…全員気ィ入れろ。こっから試合終了まで第1Qと同じ…」
ベンチで見ている遥ですら感じる威圧感を、コート上にいるメンバーが感じていないはずがない。
日向の言う通り、これからは。
「点の取り合いだ!!」
叱咤が飛び交う。
激励が飛び交う。
火神が点を取る。
黄瀬が点を取る。
選手が走る。
監督が叫ぶ。
「止まらないで!」
残り15秒、98対98。
「時間ねぇぞ!!当たれ!!ここでボール穫れなきゃ終わりだ!!」
日向に奮起された誠凛は積極的に前へ出る。
激しい行き交いに、見ている方も息をつく暇がない。
「守るんじゃダメ!!攻めて!!」
カントクの指示が飛ぶ。
もし同点で終われば延長戦。
しかし、誠凛にはそれに耐えうる体力は残っていない。
今勝敗を明らかにしなければ、どっちみち負けてしまう。
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