「早いけど『勝負所』よ、日向君!」


カントクの判断により、誠凛主将のスイッチが押された。

リコは続けざまに、火神個人にも指示を出す。


「黄瀬君に返されるから火神君OF禁止!DFに専念して。全神経注いで黄瀬君の得点を少しでも抑えて!」

「そんな…それで大丈夫なんで…すか?」


やや自惚れのように取れないこともないが、この試合で攻撃の中心となっていたのは火神なため、自分がDFに専念すると大幅な攻撃力ダウンになると懸念するのも当然かもしれない。

現に彼はそれだけ活躍している。

口を挟んだのは主将の日向だ。


「大丈夫だってちっとは信じろ!」

「でも……」


なおも食い下がる火神に、遥がそろそろ口を開こうと振り返ったとき、日向は笑顔のまま毒を吐いた。


「大丈夫だっつってんだろダアホ!たまにはちゃんと先輩の言うこと聞けや殺すぞ!」

「………!?」


火神の顔が引き攣る。

普段の主将と似ても似つかぬ豹変ぶりに驚いている火神に背を向け、日向は部員たちを纏めながらコートへ向かい始めた。


「行くぞ!」


結局火神に何も説明出来なかった遥は、苦笑しながら遠ざかる彼らの後ろ姿を見送る。


「ったく今時の1年はどいつもこいつも……もっと敬え!センパイを!そしてひれふせ!」

「スイッチ入って本音漏れてるよ主将!」


伊月にツッコまれようが、日向の本音は漏れ続けていた。

事情を知っているカントクとマネージャーは、やれやれと肩を竦める。


「順ちゃんのあれ、凄いけどほんと二重人格レベルだよね…」

「………否定はしないわ」

「まあここで粘ってほしいし、決めてもらわないとだけど」


黒子への処置を全て済まし、出来ることがなくなった遥もベンチへ腰掛けた。

コートに立つのは日向、伊月、水戸部、火神、そして黒子と交代で入った小金井。

試合が再開される。

伊月のパスが、小金井のスクリーンによりフリーとなった日向に渡った。


「あいにくウチは1人残らず……諦め悪いのよ」


リコの断言の数秒後、放たれたボールが綺麗にネットを潜る。


「誠凛2年、侮らないでね」


未だ眠る黒子の方へ視線をやりながら、遥は呟いた。

それを合図に、リコによる部員紹介が始まる。


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