「……?」


相手主将の清々しいまでの見事な蹴りに感心していた遥だったが、その2人のやり取りに何かを察し首を捻る。

海常4番は優秀なPGだ。

黄瀬が出るとなれば、速攻で何かあってもおかしくはない。

そうしているうちに、試合が始まった。


「あ!!」


開始直後、早速その『何か』が起こる。

マークを躱した黄瀬に、笠松からのパスが通った。

高く飛び上がった黄瀬は、


「こっちもアイサツさせてもらうっスよ」


先程ゴールを壊した火神と同じように、ダンクを叩き込む。


「おおぉおおお!!」


周りから興奮の声が上がるが、海常主将は納得がいかなかったらしい。


「バカヤローぶっ壊せっつったろが!!」

「いってスイマッセン!」


黄瀬を叱りつけた後、主将はそのエースの脇腹に、これもまた見事な蹴りをお見舞いした。

未だにダンクの衝撃を吸収しきれていないリングは、音を立てて揺れ続けている。

そう簡単にゴールは壊れるものではないが、今の破壊力は火神を上回っているかもしれない。


「女の子にはあんまっスけど…バスケでお返し忘れたことはないんスわ」


火神の『挨拶』を『返した』らしい黄瀬の挑発に、頭に血が上りやすい誠凛エースのスイッチもオンとなった。


「上等だ!!黒子ォよこせ!!!」


思いがけないところに突如現れた黒子のパスが決まり、ボールは火神へ。

海常陣を置き去りに、彼は得意のダンクをぶちかます。


「おぉ!!」


───それから約3分間、両チーム総力全開でのハイペースな点取り合戦が続いた。

ベンチにいる遥の双眸は、忙しなく左右に行き来している。

コート外で見ているだけでも、忙しく置いていかれそうになるのだから、コート上の選手たちの負担は相当なもののはずだ。


「………リコ」


遥がカントクに声をかけると、コートでは火神が黄瀬を振り切り、フェイダウェイを仕掛けたところだった。

しかし素早く対応した黄瀬にボールは奪われ、キレの増したフェイダウェイを返される。


「……そうね。申請してくるわ」


常に火神の上を行く、『キセキの世代』黄瀬涼太。

このままではどう足掻いてもジリ貧、分が悪い。

切り替えるためにも休憩が必要だろう。


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